生地 雅之

2021 23 Aug

密はデパ地下だけか?

この様な質問やコメントが多く出ていますが、本当なのでしょうか?
まず、仕事柄百貨店や、GMS,・FBやSCのモールにも出向いていますが、やはり密なのは百貨店のデパ地下です。同じ目線ですべてを横一線で見ると間違いなくデパ地下は密です。

4月にダイヤモンドオンラインで流通ジャーナリストの村上達也氏も表明されていましたように、百貨店ではガラガラは衣料品売場等であり、デパ地下の休業こそ必要と言われていたのはまさに正しいと言えるでしょう。デパ地下の入場制限は4月以降やっておくべきでした。

理由はデパ地下は百貨店の1層(面積は少ない)であり、約1/10を構成していますが、売上は30%程度(都心やターミナル立地では、28%程度、地方。郊外では35%)で、全国平均が30%なのです。

食料品の単価も百貨店平均を大きく下回り、1人当たりの購入数量も多いのが実態です。GMSの食品売場も全面積の1/3程度ですが、売上は65%にも到達しているのです。1人当たりの購買点数は百貨店の方が少ないのですが、デパ地下の人口密度はGBSの食品売場の約1.5倍に相当するのです。しかし、デパ地下は混んでいて、スーパーの食品は混み合っているのは一時(食事時間前程度)なのです。

また、1点単価もGMSより高額なので、購買決定にも包装等やレジ対応にも時間も掛っていて、滞留時間が長くなっているようです。レジも早くなくManToMan対応であり、GMSのように決済も手は触れないにしてもトレイなのです。勿論、百貨店なのでセルフレジの導入には考えがあるでしょうが、

また、どこかの食品チェーン店が始めようとしていますワクチン・パスポート(ワクチン接種が済んだ証明書)を付けるとか、小売業としてはお客様に従業員そのものが安心・安全であることを表明する必要(義務か)があります。一般ではユダヤとナチスの区別等のコメントも出ていますが、接客業の接客する側なので、当然と言えるでしょう。勿論、組合との合意が前提なのですが、

この中での百貨店の密を防ぐには、本来なら食品売場面積を増加させる必要があります。水回り・火回り等があり、触れない箇所も多いのが実情です。水回りや火を使わないギフトやお菓子などは他の売場を減らしても、増床させて通路等を広げるべきではないでしょうか?このような柔軟な対応が出来ないようになってしまっているのです。

過去の百貨店は現在のコンビニのように、雨が降れば傘を前面に出し、気温が昨日よりも5度も高ければ、半袖を前面に出すような指示が社員から出ていたものでした。その時もそうでしたが、場所を販売員付きの取引先に貸し、取引先のマニュアル通りの運営に従っているようになっているのです。百貨店マンが口を出していない(的確な指示が出せない)のです。

当時は販売員付の売場でさえ百貨店の意思が前面に出ていたものでした。たまに間尺に合わない百貨店側からの指示(例えば、当時売り場を各ブランドすべてGREEN色でVPする等=MINT・GREENもMOSS・GREENもあり、系色の違う色を色名での統一指示が出ていたり)もあり、取引先と揉めてもいたのです。

今から振り返ると笑い話の様ですが、両者真剣に売上を作るのに百貨店社員と取引先社員が議論を戦わせていたのですが、今や虚ろ。いつこんなに百貨店が弱くなってきたのでしょうか?取引先が売れるモノを持ってきてくれないや、取引先は百貨店は売れないと思っているように、他力依存から抜け出せていないからなのです。

百貨店は食品の粗利率が低いので、大きなシェアの売上にしにくいのです。この件は、過去から提言していますように、GMSは食品利益額構成比が高く、衣料品や住居関連の利益の赤字をカバーしているのですが、百貨店は衣料品の利益額で食品の低い営業利益をカバーしているのです。

百貨店もGMSもどちらも全体としての営業利益率は低く1.5%程度なので、お互いの良い処(利益率の高いカテゴリー)を参考にすれば見えていない事も見えてくると思われると提言をしていても、各社同業他社の真似事しかできていないのが実態です。そして新しい事をすれば結果が出なくても評価される不思議な業界なのです。

例えば、どこかの百貨店が信託事業を始めたら儲かっているのかも見抜けなく、参入してくる他社もあり、逆に過去から他社が手をだしていたBtoBのファッション持ち込み販売(オーダーも含む)模様は昔ながらの企業外販であり、中々黒字化しなく消滅していたものの復活なのですが、儲けられるビジネスモデルになったのでしょうか?

この様な事業に手を出している事は、既存事業では持たなくなり、各社は違うと言われても、むやみやたらと手を出しているように見えるのです。小職が本年6月に繊研新聞に寄稿しました「それで儲かっているのか?」のように足元を見ずに、手を出しているように見えるのは理解不能です。

計画上は黒字が出る立案に、過去の業界他社の失敗事例が全く役に立っていないのです。自社なら黒字に出来るというのは思い上がりなのです。やる前に成功すると判断しているもの、やる前に失敗すると判っているもの、やらないと判らないものの区分があるのでしょうか?

また、まだ売上に目が行き、利益視点もなく、儲からないビジネスにのめり込んでいるのです。ビジネスは営業利益額・率の高いビジネスの拡大と、営業利益額・率の低いビジネスの縮小に尽きるのです。その視点に立った自社事業(既存・新規共)を見直す必要があります。


現在は自社・自店がこれからどうあるべきか、それに向かって現状からどう進むべきかを構築する必要に迫られてきています。経済環境は間違いなく変化の兆しが見えています。どう変わるのかは別として、その中での自社・自店は何をすべきかが問われているのです。

是非とも、健全なる企業経営に向けて、早急に改善・改革される事を祈念致します。
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