生地 雅之

2021 12 Apr

組織の方向性転換

最近、大手小売業の組織変更や人事異動が発表されています。

特に大手百貨店では、今まで販仕分離していた阪急阪神百貨店が、カテゴリーの半分程度ですが、店に権限を委譲し始めたのです。いままでは高島屋、大丸松坂屋百貨店にように店長権限に仕入れも委ね、本部機能を縮小しているのです。本来百貨店は店毎に顧客のターゲットや年齢層が異なるので、店に権限を与えた方が顧客に近い仕入れが出来易いのです。

 

過去のGMSのカリスマと言われたTOPの指示のチェーンオペレーションに影響され、百貨店まで本部機能を強めてきていたのです。先に三越伊勢丹の後追いをして販仕分離をしてきた高島屋が数年前に10年遠回りをしたとのコメントで販仕分離をやめ、大丸松坂屋百貨店も過去は本部機能が強かったのですが、両社とも店機能を高めてきたのです。三越伊勢丹は少し前より、三越銀座店を基幹3店から外し、立川等支店扱いに並列化し、TRYで仕入れも店自ら行えるようにシフトしていましたが、コロナ禍でもあり、インバウンドの落ち込みが大きく、結果が出せていません。

 

本部機能を強めるメリットは、全店共通展開出来るメーカーや取引総額での交渉が必要な場合や商品開発力やセレクト目線力の依存度が高い場合は力を発揮するのですが、デメリットとしては店毎に顧客のニーズが異なるような百貨店では店に権限を与えた方が仕入れ率は店別に異なるのですが、顧客密着型で消化も売上も高くなり易いのです。阪急阪神百貨店の販仕分離を一部残したバランスはその強みと弱みを意識したもので、素晴らしいものです。

 

いままで三越伊勢丹と阪急阪神百貨店は商品部の権限が強く、店の仕入れはそう権限もなく、店長の権限は外商や友の会の会員売上程度であり、商品のからむ売場への権限はそう大きくはなかったのです。店は売上と人員の管理がメインであり、結果店長は施策もそうコントロールできない環境になっていました。高島屋や大丸松坂屋百貨店は逆でしたが、

 

この様に企業別には方向性が異なるのですが、戦略として小売業はローカライズ&カスタマイズしなければ生き残れないのですから、自店のお客様に近づかなければ購買していただけないのです。よって、自店のお客様のニーズ(顕在需要のみでなく顕在需要迄も)を把握し、供給していくことが必須なのです。戦術としてはナンバーワン&オンリーワンも重要なのですが、

 

ここが難題なのですが、顧客管理やデータ収集については投資を含め、かなり真剣にやっているのです。しかし、データを集めるのに経費を掛けているように見えるのですが、百貨店もGMSも解析が出来ていない状態なのです。百貨店は特に先の商品を提案するので、お客様がどう判断されるのか判らないという思いが強いのか、実態を正視出来ていないようです。出来ていればもっと売上は取れている筈なのですが、、

 

小売業はお客様にとって良い商品を仕入れれば買いに来て頂けるという思いが強く、商品力強化に奔走してきたのです。特に三越伊勢丹は断突であり、阪急阪神百貨店もそれなりで、他社の追随を許さないのです。しかし、良い商品というのは本来お客様にとって良い商品であるべきなのですが、百貨店は買い手・使い手のお客様の実態把握(ニーズ)を把握できていない小売業になり、良い商品とは「買い手・使い手」にとってではなく、「作り手・売り手」にとって良い商品になってきているのです。

 

まして、店頭で売っているのは取引先メーカーの販売員達であり、POSデータの結果のみではお客様の声を取り入れる事は出来ていないのです。売るのに説明時間を要し手間取っていたとか、何も説明なしに会計まで進んだとかはそう見えていないのです。結果のPOSデータの解析(深読み)徹底と今後の予測、またどのように顧客をリードするかまでの考えが必須です。つまり結果のPOSデータでさえ、解析次第ではそうブレない先読みもできるのですが、、

 

小売業を生業としていると標榜しているなら、リストラに奔走する事も経営維持には必要であっても、入社した時はまず売場に配置した筈なので、もう一度売場に配置して1日に1枚でも売って頂ける考えはないのでしょうか?「売場で役に立たないからスタッフになっているので無理」とのコメントも聞こえるのですが、入社当時のように再度販売技術の磨き直ししてでも、人時配置の再度見直しも、、(売上に応じた人員配置のみでなく、売上に応じた面積配分も)

 

既に商品力はメーカー依存であり、品質の悪い商品はなく、仕入先もお店にマイナスになる商品の納入はほとんどないのです。百貨店においては特に問題なく、GMSは仕入の目の甘さは残っている場合も一部存在しますが、問題はお客様に「フィットしていない事」とお客様に「お伝えする手法」に大きなギャップ(適していない)があるのです。

 

例えば、デジタル化にシフトするのは良いのですが、自店のお客様の実態に適した手法が取られていないのです。確かに経費節減で紙媒体の方が経費は高いのですが、自店顧客がすべてWEB広告で対応できるのでしょうか?ユニクロは年配の方にはベーシックな単品を新聞折り込み(若者は新聞を取っていない)チラシで継続し、若者にはTVCMでタレントの綾瀬はるかさん等を起用して商品単品告知よりもイメージ向上に使い分けています。顧客ターゲット別「に、、

 

別途、最近のマーケティングデータをみても、オンライン回答者の集計が多いので、回答者がPCで回答できる人の中のデータでしかないのです。特に年配の方のデータは信憑性が低いと言えます。どこかのデータ(3年単位)で、60歳代のPC利用比率は10年前に比べて増加傾向にあるという解析コメントがあるのですが、9年前の同データの50歳代のPC利用者数の個数と同数なのです。50歳代の方が年を取って60歳代になっただけなのです。

 

要は、商品力は既に高いのですが、自店顧客の実態の解析が欠落してきており、その実態を把握できればこの商品で良いのかの見直しと、その顧客にその商品等をお伝えする手法が適していない事に気が付くのです。ここに視点を戻して頂きたいのです。自分たちが出来ていると思っている点が根本的に間違っているのです。百貨店の幹部には真摯な方も多く存在しているのですが、企業全体が柔軟に実践できていないのです。大企業病でしょうか?

 

こう記載すると社員が「大企業病」に陥っているように捉えられがちですが、社員一人一人ではなく全体でこの議論が出来ない組織に課題があるので、「大企業病」を云々する前に会社全体のありよう(VISION)に間違いが存在しているのではないかと感じています。つまり、「我々は戦艦だから急には曲れない」というような言い訳が大手企業で多く聞かれますが、幹部こそ他人事なのです。幹部でさえ「自分一人が何を言っても始まらない」との考えが充満しているのでしょう。

 

企業の経営に必要なのは、

1.マーケティング(自社・自店のお客様の顕在需要と潜在需要の把握)

2.マーチャンダイジング(自社・自店に適した仕入れと売場構築&運営)5RIGHTS&2VMD

3.プロモーション(自社・自店の顧客に適したお伝え手法)

これを踏まえたVISIONであり、この徹底(既存深耕)以外には生き残りの道はないのです。

 

企業の健全な経営とは「まずは自社にとって、正しいヴィジョンか否か?」その次には「自社で、できるか否か?」なのです。つまり均等計算するなら、全体の25%がまともであるのです。自社がその1/4に入るのはそう難しい事ではありません。まずはTOP(経営者)が前向きに考え、実践していく事なのです。当然ミドル(取締役から部長まで)は追いてきます。そうなれば手に入れたも同然です。最近TOPの交代を発表した企業のミドルの顔の明るい事。魅力ある売場構築と魅力ある職場造りを。

 

現在は自社・自店がこれからどうあるべきか、それに向かって現状からどう進むべきかを構築する必要に迫られてきています。経済環境は間違いなく変化の兆しが見えています。どう変わるのかは別として、その中での自社・自店は何をすべきかが問われているのです。

 

是非とも、健全なる企業経営に向けて、早急に改善・改革される事を祈念致します。

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人事異動の1は、

https://blog.apparel-web.com/theme/consultant/author/ochi/c1651553-5880-46dd-941f-7eb1f1e0617b

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