武田 尚子
日本からの出展増加に新時代を実感
2023「パリ国際ランジェリー展」も盛況のうちに閉幕した。1月21日から23日までの3日間で見たこと感じたことはこれから少しずつ伝えていきたいと思う。
製品250ブランド、素材150社の出展者の中で、今回は特に小規模の若い独立系ブランドが増えたのだが、その中でも日本から4ブランド(新規出展が3ブランド)が、クリエイティブなブランドを集めた「EXPOSED」を中心に出展していたことを最初に伝えたい。これまでも単発ではあったが、今回のように複数の動きは初めてで、アフターコロナ(?)時代を想わせる非常にポジティブなものを感じた。
まず、2020年以来、2回目の出展となったのが、スタイリスト、スド=キョ=コさんによる「K+1%(ケイプラスワンパーセント)」。前回も注目を浴びたおしゃれなサニタリーショーツをベースにしながら、テンセルを使ったサスティナブルコレクションをはじめ、ベロアにドットチュール、刺しゅうレースといった新しい素材の3コレクション(いずれも3ボトム&1ブラを構成)、そして残り生地をパッチワークした1点物のアップサイクルコレクションを発表し、コレクションの広がりを印象づけた。
「K+1%」スド=キョ=コさん(㈱114代表取締役)
体に優しいシルクのコレクションで念願の初出展を果たしたのが、「Puntoe(プントゥ)」。もともとアクセサリーのデザイナーだった松本奈月さんが、京都を拠点に創業から10年、大津のオフィス、さらに近年はほぼ無人島に染色のアトリエを作るなど、自身のライフスタイルを一体化させた物づくりを行っている。「Puntoe (プントゥ)」と、ナチュラルダイの「Nuara(ニュアラ)」の2ブランド体制。
「Puntoe」の松本奈月さん(㈱ルチル代表取締役)
美しさを大切にしたラグジュアリーな雰囲気で、これまでにはなかった日本の魅力をアピールしていたのが「Maimia(マイミア)」だ。デザイナーの神成舞さんは、もともと大手IT企業の法人営業職だったが、その後、エスモードジャポン(恵比寿)でフランスから来日する一流デザイナー講師の通訳を通して、モードに開眼。ランジェリーも同じ世界のものを作りたいと、自分でブランドを始めてから今年で5年になる。2019年には上海「アンテルフィリエール」でヤングレーベルアワードを受賞。国内では渋谷西武と銀座松屋に常設売場があり、インスタによるファンも増えているが、今回は世界にその輪を広げたいと、ようやく出展が実現した。
「Maimia」の神成舞さん(㈱マイミア代表取締役)
ロマンチックな砂糖菓子のような世界を発信していた「NAGISA PARIS(ナギサパリ)」は、デザイナーの佐野なぎささんのパリへの憧れがそのまま表現されている。
日本の下着OEMメーカーで営業企画の仕事を経験した後、2017年からパリに住み、同時に自分のブランドをスタートさせた。これまで日本の百貨店などのポップアップで紹介してきたが、まる5年の節目にこれまでの集大成を見せたいと今回の出展を果たした。
一つ一つ縫い付けたアップリケや、自分で描いたイラストをプリントにしたもの、オリジナルでカスタマイズしたフランスのレースなど、凝ったクラフト感のあるものに満ちている。
「NAGISA PARIS」の佐野なぎささん
それぞれに個性が明確で、世界はまったく異なるが、その底には確かに日本的なものがあり、それは国を超えて共感を与えるものである。人と人、人と物が出会う機会に、リアルな展示会の意義があるだろう。