芹澤 絵美

2020 10 May

日本の低死亡者数に新仮説

 

COVID-19の日本での桁違いの死亡者数の少なさが世界の注目となっており、
BCG仮説、医療制度の違い、文化風習の違いなど、
さまざまな視点研究されてきましたが、有力な仮説は見つかっていませんでした。

この謎について、
京都大学大学院医学研究科の上久保靖彦特定教授と、
吉備国際大学(岡山県)の高橋淳教授らの研究グループが
「日本ではすでに新型コロナウイルスに対する集団免疫が確立されている」
という仮説を発表しました(ソースはこちら)。

SARS-Cov2(COVID-19)には、古い「S型」と感染力の強い「L型」があることは、
中国の研究ですでに発表されています。

上久保教授と髙橋教授は、更に「K型」の検出に成功し、
この「K型」が日本の死亡者数の低さの鍵だといいます。

「S型」と「K型」は通常検知されないとても弱いSARS-Cov2ウィルスで、
それがワクチンの抗原と同じような働きをしているというものです。

上記ソースによると、
「S型やK型は感知されないまま中国から世界に拡大し、S型は昨年10~12月の時点で広がり、
K型が日本に侵入したピークは今年1月13日の週。やや遅れて中国・武漢発の「G型」と、
上海で変異して欧米に広がった「変異G型」が拡散した。」

 

結論から書くと、このK型を充分に広めたか早期にシャットアウトしてしまったかが、
感染拡大と死者数の明暗を分けたというのです。


日本は1/31の時点で、湖北省縛りの入国規制をしました。
イタリアは2/1に、アメリカは2/2に中国全土からの入国を禁止にしました。

日本が中国からの事実上の入国拒否を行ったのは3/9。

上記ソースによる説明では、
「日本では3月9日までの期間にK型が広がり、集団免疫を獲得することができた。一方、早い段階で入国制限を実施した欧米ではK型の流行を防いでしまった」

この中国全土からの入国拒否の遅れが、
K型の充分な感染を広め、いっぽう湖北省縛りの規制がG型の侵入を遅らせたということです。


免疫には大きく分けて2種類あります。

・液体性免疫
・細胞性免疫

液体性免疫は、
ワクチンなどの抗原や過去の感染から抗体を作り、ウィルスと結合しその働きを阻害します。
細胞性免疫は、ブログトップの図にあるように、
キラーTやマクロファージなどの細胞がそれぞれ違った方法で病原体を攻撃します。

現在のワクチン開発の障害となっている問題の1つに「ADE(抗体依存性増強)」があり、
本来、ウイルスなどから体を守るはずの抗体が、マクロファージ免疫細胞などへのウイルスの感染を促進。
その後、ウイルスに感染した免疫細胞が暴走し、逆に症状を悪化させてしまうという現象。

このことから、抗体が活躍する液体性免疫ではなく、
細胞性免疫を優位に誘導するワクチンの開発に取り組んでいるチームもあります。


先に広まっていたS型とK型は、その両方にADEがあると両教授は言っています。

しかし、細胞性免疫が働かないS型と違って、K型には細胞性免疫が優位に働き、
キラーT細胞を活性化し病原体を攻撃しているというのです。

欧米では先に入ったS型のほうが多く蔓延し、
早期の入国規制によりK型が充分に蔓延しなかった為細胞性免疫を獲得出来ず、
S型のADEと相まって症状が悪化、現在の状況になった、というわけです。

日本で4月に入って感染者数が急増したことについての説明としては、
「3月20~22日の3連休などで油断した時期に欧米からの「G型(上海で変異し欧米に入ったもの)」が侵入し、4月上旬までの第2波を生んだと考えられる」

さまざまな仮説がある中、
私的には、BCG仮説よりももう少し納得できる気がしました。

もちろん様々な疑問もあります。
封じ込めに成功している国の状況はどうなのか?

私が住むニュージーランドでは2/2に中国全土からの入国拒否を行いました。
この仮説が正しいなら、ニュージーランドでもK型が充分に広まっていない可能性がありますが、
ニュージーランドでは、死亡者数は極めて少数です。
免疫が獲得されず、まだ感染増大のリスクがあるのかどうか、
そしてこのまま新規発症者数があまり増えないようであれば、
免疫を獲得せずにウィルスが終息したという何か別の説明が必要そうです。

<日本の入国制限の遅れは、結果的には早期に制限をかけず、
ワクチンと同様の働きをする弱いウイルスを広めるのに役立った。>

もっと詳しく検証する必要があると思いますが、
もしも本当にそんなことが起こっていたならば、偶然の賜物で安倍政権は本当にラックを持っていると思います。


下記、参考にしたサイトです。
・新仮説オリジナル記事ZAKZAK
細胞性免疫と液性免疫
ワクチンが効かない原因ADE