山中 健

2020 30 Dec

2020年行って勉強になった店5選

2020年も残りわずか。今年のことや来年のことをあれこれと考えています。店周りが趣味であり、ライフワークである私ですが、今年はあまり動き回ることもできず、特に海外は1月にロンドンとパリに行ったきりとなってしまいした。そんな中で訪れてヒントや気づきをいただいた店をあげたいと思います。随想として順不同で綴ります。

 

1.無印良品 東京有明

12月にオープンした同店。想像以上の出来栄えでした。住まいにフォーカスしたMD。衣食住のうち、食と住を拡大しています。

1Fの食フロアは人気のカフェや冷食、レトルトコーナーに加え、地産地消の食材やベーカリー、ジューススタンド、ブレンドティー工房、量り売りなど、無印良品の最新の取り組みを体感しながら買い物できます。

2Fの住まいのコーナーは同店の目玉。モデルハウスを店内に設置。周辺には生活雑貨の陳列の他、インテリアや収納、片付けのコンサルテーションを行う「くらしなんでも相談所」、「部分リフォーム」の事例展示など、様々なソリューションが可視化されています。また店舗スタッフのオフィスも可視化。法人向けサービスへの意欲も感じさせます。

そして、エシカルへの取り組みもたくさん。江東区とコラボしたという「食品回収ステーション」、「古着回収ステーション」「洗剤量り売り」などの取り組みも行っています。

 

開業当時から日本でエシカルなメッセージを発信してきた無印良品。コロナ禍を経た生活者の意識の変化、SDGsの広がりなどにより市場ボリュームのプレイヤーがキャッチアップしてくる中、同社は一歩先に進んだと言えるでしょう。

 

2.新風館

京都の烏丸御池にあるショッピングセンター新風館。米英で人気のエースホテルが出店して話題に。同SC ではそのエースホテルの持ち味を日本流に新解釈し、ショッピング全体に拡張しています。ショッピングセンターはリニューアル前と同様に回廊式の構造ですが、そのパティオには野趣なグリーンを配置。まるで森の中にし同館を作ったかのようです。出店しているテナントは、ブルックリンのウィリアムバーグにも店を構える「ピルグリム サーフ+サプライ」「ル ラボ」や「1LDK」などが並びコージーな雰囲気を楽しめます。また飲食もユニークな軽飲食を集結。ハシゴしながら楽しみたくなる構成です。

同館や明らかに観光客狙いですが、NYなどにある上質な観光SCと地元のコミニティづくりとなるライフスタイルセンターのハイブリッドのようにも思います。インバウンドが期待できない今、厳しい状況であると思いますが、ミヤシタパーク同様、観光SCの新たな方向性を示す商業と言えるでしょう。

 

 

3.リンクス梅田

このSCは都心型生活商業の新たなカタチを示しているかもしれません。大阪駅の心斎橋北口直結。ルクアの向かいです。もともとビックカメラがあった建物の横にありビックカメラとシームレスにつながっています。ここの特徴は大阪駅前ながら出店しているテナントのほとんどがロードサイドや郊外SC業態であること。ユニクロやニトリはもちろん、洋服の青山(スーツカンパニー、ユニバーサルランゲージとの複合)、ジーンズメイト、チャオパニックティビー、コーエンなどが集結しています。

これらのブランドが都心に出るケースは増えていますが、劣化したファッションビルや繁華街の路面であることがほとんど、このようにオープンから集結するのは珍しいのです。コロナ禍で苦戦する大商圏商業。近隣客をリピートさせるための仕掛けに腐心していますが、このような郊外業態集結というのが手っ取り早い方法であるかもしれません。ただ、2019年11月にオープンした同館。すでに空き店舗も見られます。この事実も勉強になりました。

 

 

4.ルイヴィトンメゾン大阪御堂筋

同店のカフェは、ウィズコロナ期に華やかな気持ちにしてくれました。訪れたのは今年のハロウィンの翌日。コージーさと晴れ晴れとしたムードでサーブされるのは、SNSに映える一品。私がいただいたカフェラテのラテアートはヴィトンのモノグラム。インテリア、メニューともに考え尽くされたものでしたが、私が気づかされたのはゲストたちの表情。不安が蔓延する中、ハレや華やぎを与えるラグジュアリーの力を目の当たりにしました。

 

5.下北路線街

下北沢にある小田急線線路跡に作られた新たな商集積。立地も業種構成もこれまでのSCとはまるで違い、新たな商業施設のあり方を提示しています。

駅の上にある「シモキタエキウエ」はよくある小型駅ビルの業種構成ながらテナントは地元を志向。チェーン店で占められる他の駅ビルとは一線を画します。そして、駅からちょっと歩いたところにあるBONUS TRUCK.が新鮮。若手や個人の飲食や食物販、古着店などが集積。マーケットも開いており、近隣住民ニーズにもわざわざ訪れた来街客ニーズにも対応しています。

下北路線街には、他にも話題になった温泉旅館「由縁別邸 代田」、居住型の新しい教育施設「シモキタオフィス」、東京農業大学の一般向け施設「世田谷代田キャンパス」、保育園、住居などがあります。「地域のコミュニティー」をコンセプトとして掲げる商業施設がここ10年ほど増えてましたが、下北路線街は、商業の枠を超えて新たな地域コミュニティーを作ろうとしています。まだ全て完成しておらず、今後も注目してい行きたい施設です。

 

他にも、ユニクロの新たなステージを開いた「ユニクロTOKYO」、ファッションビル、百貨店、郊外SCの枠を超えた商業施設「心斎橋パルコ」や「ニュウマン横浜」、新たな時間消費型施設レイヤード「レイヤードミヤシタパーク」、イケアの都市型店舗1号店「イケア原宿」アメリカから上陸したショールームビジネス「b8ta」なども勉強になりました。

 

コロナ禍は大変な痛みをもたらせましたが、業界の様々なしがらみもリセットしました。2021年は、もっと新しい店や業態が誕生することと思います。

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