上野 君子

2018 27 Oct

豊かな庭から生まれるもの

地元の友人から、宝物のような梅干しをいただいた。ワインのように、出来た年のメモが小さく添えられている。

ただの梅干しではない。何とご自宅の庭にある梅の木から採れた梅を、毎年、自分で丁寧に干したり塩漬けしたりしてできた貴重な梅干しだ。本当の豊かさとはこういうことではないか。

 

その友人宅は地元でも歴史ある一等地にある。ずっと先の方まで続く背の高い生垣からは、お庭も家の建物もあまり見えないのだが、そのお庭にはたくさんの木や植物が植わっている。

まだ見ぬその庭は、熊谷守一を描いた映画『モリのいる場所』のあの庭の感じかなと勝手に想像している。いやもっと広そうだ。

紅葉の木が数本あるらしいのだが、今年は例の塩害で色づかないらしい。

木のある庭というのは、昔からの私の憧れ。

ビワの実はハクビシン(どうも庭を住処にしているらしい)にやられるというような悲劇もあるようだが。

 

最初にビワの葉をいただいた時に伺ったところによると、薬草関係では、茶、山椒、ニッキ、月桂樹、桑、熊笹、薄荷、ドクダミ。食べられるものは、蕗、茗荷、三つ葉、クレソン、ノビル、四方竹、棗、栗、柿…。

もちろん花も大好きで、台風が来るとなると、皇帝ダリアに支柱を立てたりしていらっしゃる。

植物のことは何でもよくご存知のはずである。

 

そういう環境で育ってきた人らしく、あらゆることに目利きで、おいしいものをいろいろ知っていらっしゃる。好奇心が強く、とにかく方々歩いていろいろな店を体験することは欠かせない。

寿司屋をはじめ、人形町の人形焼きとか京都の昆布もいただいた。単に銘品とか高級というのではなく、その選択眼には独特の美意識がある。いわゆるグルメというのとは一味違う。

それらを作る職人へのリスペクトのようなものだろうか。もちろん人柄の好き嫌いも大きい。

そんな友人から最近いただいたのが、枝豆(丹波の黒豆)と真鶴のイカの塩辛。

どちらも絶妙のお味であった。