上野 君子
シニアを排除しようとする社会に疑問
週2日程だが、とある小売業の仕事にかかわって4年が経とうとしている。
「コンシェルジュ」という名前がついているものの、時給1000円強のしがないアルバイトの身である(オープニングスタッフはそれなりの高い競争率だったが)。
各世代の多様なキャリアを持った人々が集まる職場では、60代以上のスタッフも数人いる(逆に、学生アルバイト以外は20代が少ない)。
生涯初のレジの仕事もシフトで回ってくる。生まれた時からコンピュータのあったような若い世代と違って、若い頃にコンビニのバイトなども皆無だったような私たち世代にとっては、レジの作業はなかなかの難問だ。
ベーシックなケースはいいが、最近は電子マネーの種類も増えて支払い方法も多様化、それ以上にカードのトラブルとかイレギュラーな要求がいろいろある。さらにカード会員のサービスと称して、対応は複雑化する一方。
シニア層だってこういうPOS業務が得意な人もいるが、若い世代に比べると総じて苦手な傾向にある。私は新しいシステムはなかなか覚えられないし、一度覚えたといっても毎日やっていないとすぐには出てこない。はっきりいうと、この仕事はボケ防止のためにやっているようなものともいえる。
最近、店がお客様へ実施したアンケートの結果に、「シニアがレジのオペレーションに当たっていると、本当に正しく打っているか不安」という意見があった。そうおっしゃるのは、30代や40代が中心。
全体からすれば1%、いやそれ以下の割合かもしれないが、そういう声は赤線でマークされていて、我々シニアのスタッフは苦笑した。
これは私が言うべきことではないかもしれないが、あえて。
多少時間がかかってもいいではないですか。その場限りかもしれないが、人対人のコミュニケーションの中で、もっと思いやりのある寛容なつながりができないものでしょうか。
日本人はたいていこういうシステマチックな仕事が得意だが、海外に行くと、ただでさえ、効率悪い仕組みの中で、お客は根気よく待っている。その位の人間としての器量がなくてどうする。
あらゆる人はそれぞれに役割が違うはずなのに。スタッフ間の中にも、「できない人」を責めるような価値観の人がいる。
それ以上に重要なのは、こういう声を雇用側の店や会社がどうとらえるかだ。これとは無関係かもしれないが、店の規約では今年になって突然、「65歳で定年」と明記された
これだけは言える。「シニアがレジのオペレーションを担当していると不安」とおっしゃるあなた。あなただって、すぐに「シニア」になるのです。人は平等に年を重ね、誰しもが加齢の悲哀を痛感するのです。これからの世の中の変化の速度の方が早いですよ。