上野 君子
もっとスキンシップを
10月に入ってから、ボディケアの日々となっている。
優雅な話ではなく、歯が取れて歯科医通い、年に一度の乳がん検診、そこまではいいが、1週間前に喉に違和感が出た翌日に声が出なくなり、連休明けに耳鼻科、ほぼ同時に目がひどく充血して目ヤニで目が開けられないほどになり眼科、ここ数日は夜中の咳に悩まされ、そうこうするうちにもう2週間、つまり10月も半分が過ぎようとしている(まさに「生産性」がなく、医療費がかさむ日々)。
薬の副作用もあって、ずっと頭がぼーっとして仕事にも身が入らない。原稿が進まない。
当初は風邪と思ったが、風邪ではないらしい。耳鼻科によると何らかの「細菌」感染らしいが、眼科で結膜炎の原因を調べると「ウイルス」反応は出なかった。
「細菌」とか「ウイルス」の次元になると、精密検査するわけではないので、医者もあいまいなことしか言えない。
それ以上に、声が出ないというのに聞こえないふりして何度も言葉尻を質問してくる耳鼻科医の態度に驚愕し(同時に鼻につっこまれる管の恐怖にもおびえ)、3年前に声帯までウイルスが入ったとかでまったく声が出なくなった時、この耳鼻科には二度と来るものかと思ったことを思い出した(何年経っても性悪な人の性格というものは変わらないものだ)。近くにもう1軒ある耳鼻科は予約でいっぱいだったので、仕方なしの選択だったのだ。
後で、薬剤師に聞くと、総じて年配者には冷たい医者で、他の人からもよく苦情があるという。
3年前は、私が海外出張に出ていた1週間、母を近隣の施設へ初めてのショートステイに送り出し、帰ってきたところで、そこでの経験をいろいろ聞いてあげたかったのに、声が出ず会話ができなかった。あの時の無念な気持ちを思い出した。
それにしても、今さらながら思うのは、母をだきしめてあげればよかったなということ。
北欧のタクティルケアに倣って、母と父にはよくアロマオイルでハンドマッサージ(時には顔も)をやってあげた(とても気持ちよさそうにしてくれていた)が、それ以上のスキンシップはあまりなかった。それは日本人特有の習慣や照れからくるかもしれないが、母を一度もきちんとハグしてあげなかったことは今でも後悔している。母はもっとスキンシップを求めていたように思う。
親しい人とハグしたり、肌をなでたりさすったりしてもらうと、家族においてスキンシップは大事、スキンシップこそ愛、とつくづく思うのだ。