上野 君子

2018 06 Oct

店主へのリスペクトの上に立つ文化

終戦直後は闇市だった場所として知られる新宿駅西口の思い出横丁(別名・しょんべん横町とも)。新宿のゴールデン街などもそうらしいが、今や観光客がひっきりなしに押し寄せるメッカとなっている。線路際は比較的大きめのキレイ系の店が並ぶが、内側は薄暗い中に時代がかった小さな店がひしめいている。

その中の1軒、鰻の各部位を炭火焼で出す名物店に、先日、悪友に連れられて行ってみた。

まだ18時前だったが、10席程のカウンターは既にいっぱい。少し待って席にありついた。

のんべいの私は若い時から、屋台でもどこでもたいていの所には行っているが、ここにはカルチャーショック。はっきり言って、店は汚い、店主はそっけない、店独特のスタイルやマナーがあることは明白で、ある種の緊張感が漂っていた。

 

隣に座っていた初老の男性は、もう数十年は通っているという常連さん。今でも週に2回、近くのスポーツクラブで汗を流した後にこの店に来るのが楽しみなのだという。

いろいろ話していると、先代の時代、この店は(男性と一緒に来店するケース以外)女性客は禁止だったとか。

曰く、女性はすぐに、出てくるのが遅い、接客態度がよくない、店をもっと清潔にしろ、あれをこうしろああしろとうるさい。つまり店主に対するリスペクトがないというわけだ。

こういう店は、だまって出てくるのを待つ、店の流儀をありがたくいただくものと、その初老の男性はにこにこしながら話していた。

 

その話に、深く納得した。店でクレームをつけるのはたいがいが女性(いや、質の悪い男性もいますが)。一般的にいって女性にはプロフェッショナルな人に対するリスペクトの念が欠けている。

世の中、ビジネスは女性をターゲットにすべきとかなんとかいいながら、店のスタイルもサービスも、いや店のつくりも料理の内容まで、画一的にキレイになりすぎているのではないか。

男性が一人で行き続けるような店には、ディープなカルチャーがある。

こういうのも日本特有の文化で、それは遺すべき、いや遺ってほしいと私は思う。