5月4日の封鎖解除後に、「大変だったイタリアがやっと封鎖解除になって嬉しい」、「イタリアの再開が希望を与えてくれる」・・・というメッセージを何人かの方からいただいた。中国以外の国で最初に爆発的感染が起こり、他の国々の状況も深刻になるのに先んじて悲劇的なニュースを世界中に流していたイタリアだけに、その復活を喜ぶ人、かつ他の主要ヨーロッパ諸国より少しだけ早く解除を行ったこの国の動向を希望を持って注目する人は多いのだろう。

とはいえ、解除第一弾はかなりの規制付きだったため、ショップ、レストラン、美容院、美術館が再開し、友人と会うことも可能になった18日が実質的なイタリア“復活の日”となった。そしてファッションの街・ミラノとしては、とにかくショップ（特に服飾関連）の再オープンに注目と期待が。先々週は解除第一弾の規制をすり抜けてでも羽目を外そうとしていたイタリア人、店やレストランが開いたらさぞかし大盛況になるだろう。

・・・と、私は予想していたのだが、街の中心地の店には意外と人が入っていなくてびっくり。人数制限があるからどこも並ぶだろうと思いきや、18日の午後にはかろうじてリナシェンテ（ミラノ最大のデパート）に７，８人の列ができていたぐらいだった。カジュアル服やファストファッションの多いヴィットリオ・エマヌエレ2世大通りやトリノ通りも、若者達が歩いているものの店に列はない。かつてはいくつものショッピングバッグを下げたお洒落さん達が闊歩していたモンテナポレオーネ通り（ミラノ随一の高級ショッピングゾーン）にも人はなく、それをいいことにフェラーリとランボルギーニが通りを爆走していた。ほとんど、田舎のヤンキーですね・・・。

なぜか。

まず、観光客がいない。元々モンテナポレオーネ通りにいる客の多くは外国人なのだ。ではイタリア人はどうかというと、普段、街を満たしているのはミラノ郊外から来ている人たちで、彼らはこの時期、感染の危険を冒して電車に乗ってまでわざわざ買い物のためにミラノまでやって来ない（この層はそもそもミラノに来てもそんなにはお金は落とさないが）。

そしてミラノ中心に住む小金持ちミラネーゼは、見栄っ張りなので誰も本音は言わないものの、ショッピングや外食にかける出費を抑えている。つまり、平民はお金がないのだ。店には人数制限があり、商品をやたらさわらないよう店員がべったりと接客してくださるので、ひやかしで店には入りにくいし。
一方、お金に余裕のある中金持ち以上のミラネーゼマダムに関しては、2月末に学校が休校になった瞬間に山や海の別荘に避難しているので、まだミラノには戻ってきていないだろう（そして、このままバカンスに突入する）。さらにその上の大金持ちはきっと、プライベートジェットで南の島へ行ったか、どこかの海をヨットでセーリングしている。

・・・と言うのは私の勝手な分析だが、客足がすぐには伸びないのを予見したのか、オープンしていない店（大手ブランド含む）も結構あったし、レストランもテイクアウトのみを継続する店も多いようだ。確かにテーブルの間隔を1m以上あけねばならないので客席数も減るし、そうでなければプレキシグラスで仕切るなどの設備投資がいる。そもそもそんなテーブルで食事をするのも味気ないので、客のほうが来ないかもしれないが。

さらに、人々は意外と第二波を恐れて“自粛”している。封鎖解除後に感染者が増えたり、市長に続いて今度は州知事の脅しもあったのが効いたのか。マスクは屋外では着用義務はないのだが、多くの人がちゃんとしているし、ソーシャルディスタンスがわかってきて、やたら距離が近くタッチも多かったイタリア人が近づいてさえこない。キスやハグなんて遠い過去のもの。

そして25日にはジムやプール、団体スポーツも再開、6月3日には国内移動が自由になり国境封鎖までが解除（EU内）される予定で、イタリアはやや強引ともいえるほど一気に解放に向かう。これ以上、経済を止めておけない（＝国も補償を続けられないという事情があるだろう）から仕方がないのだが、それがあまりにも急進的なのも多分、国民はちょっと不安なのだろう。何しろこれまでに3万2000人以上の方が亡くなったのだから。でもそれを考えると、政令で封鎖されたわけでもなく、欧米に比べると死者数を二けたも少なく保ちながら、自粛で収束に向かっている日本はすごい・・・。

それを知ってか知らずか、イタリアが日本みたいになってきている。ぐいぐい近づいてこないし、列をちゃんと作って順番を守れるようになった。入り口と出口が決められ、導線がきれいに引かれているので、みんなが同じ方向に歩くようになった。お釣りはトレーに乗せて返してくれる店もある（単にお金の受け渡しを直接しないためなのだが）。日本人の私には住みやすくなったけど、それもなんだかちょっと寂しいかも。

エンポリオアルマーニカフェも、まだテイクアウトのみ