田中 美貴

2020 12 May

封鎖解除のミラノ セールは8月に延期

イタリアは封鎖解除から1週間がたった。とはいえ、解除は段階的に行われるので、製造業などが再開、州内の移動、散歩や運動、飲食業のテイクアウト販売、家族や恋人に会いに行くこと、15人以下の葬式等が可能になった程度だ。ショップ、レストラン、美容室、美術館等のオープンは18日からで、結局そんなに開いているところはないため、ミラノの街の稼働率はバカンスで店が閉まる8月ぐらいの感じだろうか。

余談だが、ミラネーゼは休みになれば街からすぐ脱出し、しばしばゴーストタウンになるミラノを見慣れている私は、正直なところロックダウン中さえ街の変化にそれほどの大きな衝撃を受けなかった。東京がこうなったらもちろん、ものすごくびっくりするだろうけど。

が、今回ばかりはそんな制限満載の封鎖解除にもかかわらず、街にはかなりの人が出ていた。何しろ散歩はOKなのだから。ミラネーゼが大好きな“アペリティーボ(食前酒)”のメッカ、ナヴィリオ運河界隈では、店で飲めないがドリンクをテイクアウトして道で宴会?する人で密集したので、ミラノ市長が「再封鎖するぞ」と怒りのコメントをしていたほど。

また「家族や恋人には会いに行ける」という部分について、それなら友達もアリか、同性カップルはどうなる等々、大きな話題になったのだが、基本的には「依然として複数での行動(集会)はNGだが、家族などの特別な人とは良識の範囲で会えることにする」というのがお上の言い分らしい。

が、そこはイタリア人、ルールはすり抜け、家族や恋人に会う態でホームパーティやバーベキューをしている人も多い様子。こういう輩への批判の声もあるにはあるが、日本のような”自粛ポリス”的な感じはなく、逆に「それなら私たちも~」と益々緩くなっているのが何ともイタリア。どちらがいいとは言えないが、日本のSNSでやたら批判の多い人のポストを見ていると、そのエネルギーを他に使ってほしいと思う(そういう私もそんなものを見るエネルギーを他に使えばいいのですけどね)。

こんな感じなので、イタリアでは夏のバカンスは意外と普通に行われるんじゃないかと私は見ている。Covid-19の経済ダメージで、今年のバカンスはないだろうと言う人も多いが、1年の他の日々をバカンスのために生きているイタリア人が、夏のバカンスをあきらめるなんてことがあるのだろうか。ヨーロッパで一番早くロックダウンしたイタリアは、当初バカンスに間に合うよう前倒しで封鎖したのだという失礼な話もあったくらいだが(私の意見ではないです、念のため)、そのおかげでこの調子なら完全封鎖解除はバカンスに間に合いそうな感じだ。

そんな傍ら、ミラノでは通常7月の第一週から始まる夏のセールが8月1日~と決まった。アパレル業界では春夏ものが本格的に売れ始める前、店にまだ冬物が残っているころでロックダウン休業となったので、再開後2か月弱でセールをやることに業界から大きな反対の声が上がったらしい。

とはいえ、冒頭でも触れたようにバカンスで9月にならないと街に人が戻らないミラノでは、街の中心以外の店の多くは8月の大部分を閉めてしまうのが常だ(私の予想を裏切って、ミラネーゼがバカンスに行かないのなら話は別だが)。そして今年は(少なくとも海外からは)観光客も望めない。8月にセールしてお客さんは来るのか? いっそのこと、セールは9月以降でよいのではないか。今までだってどうせバカンスで一旦締めた後、9月にまたセールを続けていたわけだし。

日本では、春夏物をオンラインで前倒しセールをしている店もあるそうで、この危機にはまず商品を売る事が大事、と考えるのもわかる。在庫コスト、展示スペース、商品の回転スパンなど、色々複雑な要素が絡み合だろうし、セールを大幅に遅らせるのは簡単ではないとも思う。が、ロックダウンの当初、ジョルジオ・アルマーニ氏もこれまでファッションシステムが走り過ぎてきたことへの警告、反省(?)文を発表していたように、こういうシーズンサイクルもこの機会にリセットすべきなのではないかという気もする。

そもそも冷静に考えたら、例えばスーパーのお惣菜は閉店間近に割引されるのに、アパレル業界はまさにこれから季節到来という時にセール・・・って、スーパーだったら昼の11時頃から夕刻セールをしているのと同じ。腑に落ちない理由で安売りされるお洋服に対してもちょっと失礼ではないですかね(笑)。