栗田 亮
シャネルN°5 って何ですか?
今回は有名なシャネルN°5 について説明します。
まず、一般的によく知られている、シャネルN°5の「公式ヒストリー」をおさらいしていきましょう。
シャネルN°5の公式「ヒストリー」
1. シャネルN°5は、1921年、ココ・シャネルが初めて発表した香水。
2. ロシア生まれのフランス人調香師 エルネスト・ボー(Ernest Beaux) に「世界中の女性たちのために、私は香りを贈りたい。そのような香りを創ってほしい」と、調香を依頼。当時の香水は、バラやジャスミンなど現実の花の香りを再現するのが主流。大量の花を消費して作られた香水は高価で、一部の限られた人しか買うことが出来なかった。
3. 1920年、ボーが試作品を作成。画期的だったのは、合成香料アルデヒドを大量に使用したこと。アルデヒドは、単体ではいい香りとは言えず、体臭のような、脂っこい香りがするが、少しずつ調合して、花の香りや柑橘系の香りと合わせると、心地よい香りに変化する。
4. ボーはココ・シャネルにサンプルを提示するために、ガラスの小瓶を10個用意。バラ、ジャスミン、アルデヒドの配合バリエーションによって2つのグループに分けられ、それぞれに1 - 5、20 - 24の番号が振られた。ココ・シャネルは、5番めの小瓶を選び、「ドレスコレクションを、5月の5日に発表する。この5番めのサンプルの名前は、運がいい名前だからそのまま使う。」と採用する。
5. 1920年代は芸術分野でモダニティやアヴァンギャルドなど抽象性の時代。ココ・シャネルは、ジャン・コクトー やピカソ、イーゴリ・ストラヴィンスキー、サルバドール・ダリ などの前衛芸術家たちと親交を結んだ。シャネルN°5には何の香りだと識別できる支配的な香りがないため、前衛芸術家たちはそれを“抽象的” な香り、キュビズム、ダダイズム、シュルレアリズムを香りの世界で実現した作品だと評価した。
6. 映画『シャネル&ストラヴィンスキー』では、「モダンで大胆な香りを科学的にブレンドした香水」「つけているうちに変化する複雑な香り」「シャネル独自の香り」というアイデアにとりつかれたシャネルが、ボーに依頼して、なんども試作を重ねる姿が描かれている。
7. ココ・シャネルは、全世界でシャネルN°5を販売するために、化粧品会社ブルジョワ社のオーナーであったピエールおよびポールヴェルタイマー兄弟と契約し、1924年にパルファン シャネル社を設立。
8. 1934年、顧客層を中流階級に拡大するため小瓶を開発。軍の駐屯地の売店(PX)で販売することで、市場を拡大。兵士が故国に残してきた恋人への贈り物というイメージを確立。
9. 1937年、ココ・シャネルは、シャネルN°5こそ自分自身を表現した香りだと語り、雑誌広告のためにポーズをとった。
10. 1945年、戦争が終結。イメージ向上の試みとして、カンボン通りのブティックの窓にシャネルのサインとともに、希望するアメリカ兵全員にシャネルNo.5の瓶を無償配布すると告知。兵士たちが行列を作る。
11. 1954年、マリリン・モンロー が、寝るときに何を身に着けるかと質問されて、「シャネルN°5を数滴」と答え、一気に知名度が向上。
12. 2018年現在も、世界で最も有名な香水である。
以上が、シャネルN°5の「公式ヒストリー」とされているものです。
しかし、これにはいくつか対する異論もあります。
次回は、その異論について説明しますね。
今日はここまで。
(キンコンカン)