栗田 亮

2018 31 May

「戦略」に必要な5つの条件ってなんですか?

ここまで見てきたように、「戦略」は時代とともに定義が変化し、意味するところが流動的です。

「もっと戦略的に考えないと」とか「うちの会社は戦略がないよ」という人も、多分にイメージで語っている可能性があります。

では、「戦略」がないというのはどんなイメージでしょう。

英語の辞書で「ストラテジック」(戦略的な)の反対の意味、対義語(Antonyms)を調べてみます。

「ストラテジック」の対義語

・散漫な(loose)

・無計画な(unplanned)

・不必要な(unnecessary)

・非本質的な(inessential)

・取るに足らない(unimportant)

・ありふれた(trivial)

・必ずしも必要でない(nonessential)

・無意味な(insignificant)

 

計画がなく、惰性的、出たとこ勝負な、日々発生する事象に対応し、短期的・局地的な利益の最大化を図る行動様式がイメージできます。

おそらく、「もっと戦略的に」という人は、こうした現状に警鐘を鳴らしているのだと思います。

しかし「戦略」の定義を明確にしないで、こういうことを言う人は要注意人物です。

試しに、「おっしゃる戦略の定義はなんですか?」と聞いてみましょう。

もし明確な回答が返ってきたら、その人は一角の人物だと言えると思います。

 

それでは、私たちは、「戦略」をどのように理解しておくべきなのでしょうか。

最後にまとめとして「戦略」に必要な5つの条件を示します。

様々な文献を参照した結果、およそこの条件が揃っていれば、「戦略」と呼んで差し障りはないと言えます。

 

まとめ

「戦略」に必要な5つの条件

 

1.目的(戦略目標)

達成すべき「目的」がある。(目的のない戦略はない)。

この目的を達成するために、逆算して思考することが「戦略」の第一歩。

目的の設定を間違えると、後の工程で修正することは不可能。

状況が見通せない中目的を立てるのには勇気がいるので、往々にして判断の先送りになりがち。

「敵」( 競争相手、ライバル)の存在はなくてもかまわない。

 

2 期間(中長期的)

短期間で解決させるべき目的は「戦略」には向かない。

企業の「戦略」は概ね3年程度の中期計画で、この程度の中長期が「戦略」を考える適正期間。

逆に長すぎる期間も、抽象的で意味のない計画になりがちなので現実的でない。

 

3.資源(戦闘力)

経営資源(ヒト、モノ、カネ)あるいは兵力(兵員数・兵器数)には限りがある。

無制限に使えるのなら、思いつくことをすべて実行すればいいのだから「戦略」は不要。

現実にはすべてに限界がある。 なによりも時間が有限である。

何をどこにどういう優先順位で、どの程度使うのか、最適配分を考えるのが「戦略」の役割となる。

 

4.思考法

この思考法こそが「戦略」の核心。

本質的、統合的、総合的、複眼的かつ実践的なものでなければならない。

資源(戦闘力)すなわち「手持ちカード」の最も効果がある使い方を考える。

選択と集中。逆に言えば「やらないこと」を決めるのが「戦略」であるといえる。

実践的な解決志向型の計画でなければならない。できもしない理想的な計画は「戦略」とは言えない。

戦略的思考の際、過去の経緯、誰かのメンツを潰したりすることを恐れてはいけない。

絶対的な指標を目指して改善するのとは頭の働き方が異なる。

どこまでの灰色なら妥協してよいかを判断することも「戦略」には必要。

 

5. 代替案

「戦略」は結果が全て。

「いかに素晴らしい戦略でも、折りに触れ結果検討が必要」。

(However beautiful the strategy, you should occasionally look at the results.)

第二次大戦中に首相となり、危機にあったイギリスの戦争を勝利に導いた、戦略家ウィンストン・チャーチルの言葉。

結果が悪ければ、B案、C案を次々と繰り出せるよう常に代替案を準備しておく。

一度作った「戦略」を状況が変わっているのに墨守することこそ戦略的ではない。

「戦略」の最大の敵はメンツ。

 

以上。

 

みなさんが、「ブランド戦略」や「販売戦略」を考える時に、参考にしていただければ幸いです。

 

では、今日はここまで

(キンコンカン)