栗田 亮
「戦略」に必要な5つの条件ってなんですか?
ここまで見てきたように、「戦略」は時代とともに定義が変化し、意味するところが流動的です。
「もっと戦略的に考えないと」とか「うちの会社は戦略がないよ」という人も、多分にイメージで語っている可能性があります。
では、「戦略」がないというのはどんなイメージでしょう。
英語の辞書で「ストラテジック」(戦略的な)の反対の意味、対義語(Antonyms)を調べてみます。
「ストラテジック」の対義語
・散漫な(loose)
・無計画な(unplanned)
・不必要な(unnecessary)
・非本質的な(inessential)
・取るに足らない(unimportant)
・ありふれた(trivial)
・必ずしも必要でない(nonessential)
・無意味な(insignificant)
計画がなく、惰性的、出たとこ勝負な、日々発生する事象に対応し、短期的・局地的な利益の最大化を図る行動様式がイメージできます。
おそらく、「もっと戦略的に」という人は、こうした現状に警鐘を鳴らしているのだと思います。
しかし「戦略」の定義を明確にしないで、こういうことを言う人は要注意人物です。
試しに、「おっしゃる戦略の定義はなんですか?」と聞いてみましょう。
もし明確な回答が返ってきたら、その人は一角の人物だと言えると思います。
それでは、私たちは、「戦略」をどのように理解しておくべきなのでしょうか。
最後にまとめとして「戦略」に必要な5つの条件を示します。
様々な文献を参照した結果、およそこの条件が揃っていれば、「戦略」と呼んで差し障りはないと言えます。
まとめ
「戦略」に必要な5つの条件
1.目的(戦略目標)
達成すべき「目的」がある。(目的のない戦略はない)。
この目的を達成するために、逆算して思考することが「戦略」の第一歩。
目的の設定を間違えると、後の工程で修正することは不可能。
状況が見通せない中目的を立てるのには勇気がいるので、往々にして判断の先送りになりがち。
「敵」( 競争相手、ライバル)の存在はなくてもかまわない。
2 期間(中長期的)
短期間で解決させるべき目的は「戦略」には向かない。
企業の「戦略」は概ね3年程度の中期計画で、この程度の中長期が「戦略」を考える適正期間。
逆に長すぎる期間も、抽象的で意味のない計画になりがちなので現実的でない。
3.資源(戦闘力)
経営資源(ヒト、モノ、カネ)あるいは兵力(兵員数・兵器数)には限りがある。
無制限に使えるのなら、思いつくことをすべて実行すればいいのだから「戦略」は不要。
現実にはすべてに限界がある。 なによりも時間が有限である。
何をどこにどういう優先順位で、どの程度使うのか、最適配分を考えるのが「戦略」の役割となる。
4.思考法
この思考法こそが「戦略」の核心。
本質的、統合的、総合的、複眼的かつ実践的なものでなければならない。
資源(戦闘力)すなわち「手持ちカード」の最も効果がある使い方を考える。
選択と集中。逆に言えば「やらないこと」を決めるのが「戦略」であるといえる。
実践的な解決志向型の計画でなければならない。できもしない理想的な計画は「戦略」とは言えない。
戦略的思考の際、過去の経緯、誰かのメンツを潰したりすることを恐れてはいけない。
絶対的な指標を目指して改善するのとは頭の働き方が異なる。
どこまでの灰色なら妥協してよいかを判断することも「戦略」には必要。
5. 代替案
「戦略」は結果が全て。
「いかに素晴らしい戦略でも、折りに触れ結果検討が必要」。
(However beautiful the strategy, you should occasionally look at the results.)
第二次大戦中に首相となり、危機にあったイギリスの戦争を勝利に導いた、戦略家ウィンストン・チャーチルの言葉。
結果が悪ければ、B案、C案を次々と繰り出せるよう常に代替案を準備しておく。
一度作った「戦略」を状況が変わっているのに墨守することこそ戦略的ではない。
「戦略」の最大の敵はメンツ。
以上。
みなさんが、「ブランド戦略」や「販売戦略」を考える時に、参考にしていただければ幸いです。
では、今日はここまで
(キンコンカン)