久保 雅裕

2019 17 Apr

ネット・プラットフォーマーのほころびが目立ってきた

昨年から今年にかけて、ネット通販大手の「アマゾン」、ふるさと納税のポータルサイト「さとふる」、ホテル予約の「BOOKING.COM」の3社でクレームを上げる案件が発生した。アマゾンは届いた商品が規格に合わず、その詳細表示も無かったことから、返品を希望したのだが結果として受け入れられなかった。さとふるは、配達先を変更したにもかかわらず、変更前住所に発送されるという有り様で、結果として転送運賃を取られてしまった。そしてブッキングドットコムは、同サイト経由の「Renatlcars.com」で依頼したフランスのレンタカー会社で保険をダブルチャージされたというもの。いずれも杓子定規な対応や、まともな日本語になっていない片言日本語による返答などで、結果として全てこちらが負担を強いられ、泣き寝入りすることになった。腹立たしさはもちろんだが、それ以上にこれらプラットフォーマーの急成長によるほころびが露見し、早晩、つまずくであろうと確信を持つことができた。

いずれも使う側の立場に立った対応ではなく、CS(顧客満足)からは程遠いのだが、あくまでも「同意している」「承諾している」といったネット側のエクスキューズを盾に使用者側に落ち度があると言わんばかりの対応であった。小さくデメリット表示だけして、逃げられるようにしようと意図しているのは、よくあるのだが、それにしても日本において、ここまでCSが後退しているのかと驚かされた。

CSについては、「日本のお家芸と言っても良いくらいだ」と海外に出てみると強く感じる事がある。パリのブティックでは、客そっちのけでスマホをいじっている販売員がいるし、スーパーマーケットのレジの品扱いは荒っぽくてハラハラさせる。グローバルで展開するプラットフォーマーは、「これがグローバルスタンダードだ」と言わんばかりに、その基準を押し付けてくるという事か。またネットですべてを解決しようとするあまり、人の心に寄り添えない仕組みで成り立ってきてしまった点も大きそうだ。

ネットのプラットフォーマーは「簡単に頼めて、便利で早くて安い」というメリットで成長を遂げてきたが、日本人が享受してきた「おもてなし」の精神を基盤としたCSは、人の力で成し遂げられるもの。ネットの先に人の温もりが感じられなければ、離反する消費者が増えていくことになるだろう。逆にCSに重点を置いた日本ならではのプラットフォーマーが確立できるなら、それは「おもてなし」の日本流ITサービス輸出に繋がっていくのではと新たな可能性を感じる経験でもあった。