久保 雅裕

2019 21 Apr

音楽にまつわる映画3本

© 2018 Hearts Beat Loud LLC

今回は音楽をテーマにした映画を3本紹介する。

まずは、父と娘のハートフルでハッピーなアメリカ映画『ハーツ・ビート・ラウド たびだちのうた』。 NYブルックリンの海辺の小さな街、レッドフックにあるレコード店を営む元バンドマンの父フランク(ニック・オファーマン)は、17年目のこの夏に店を閉めることにする。同じバンドメンバーでボーカルだった妻を自転車事故で失い、それからはシングルファザーとして娘サム(カーシー・クレモンズ)を育ててきた。そのサムもLAの医大へ通う事になり、さらに痴呆症の老母の生活も心配なこともあり、店を閉める決断へと至るのだった。

そんなある日、ふたりでレコーディングし「Spotify」にアップロードした曲が瞬く間に拡散され、たくさんの人の耳に届くことになる。フランクには娘とバンドを始める夢が生まれるが、サムは現実的な進学の不安や恋人と離れなければならない悩みもあり、盛り上がる父についていけない。そして二人はレコードショップ閉店の日に店内で、最初で最後のライブを開くという大一番に打って出た。二人の旅立ちを巡るハートウォーミングな秀逸作。

カーシー・クレモンズは、ミュージシャンでもあり、サウンドトラックの主題曲も聴き応えある素晴らしい出来栄え。6月7日よりヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテほか全国順次公開予定。

© 2019「さよならくちびる」製作委員会

続いて、日本の青春音楽映画『さよならくちびる』は、女性デュオのインディーズバンドの話。音楽にまっすぐな思いで活動するギターデュオ「ハルレオ」のレオ(小松菜奈)とハル(門脇麦)は、付き人シマ(成田凌)が参加したことで徐々に関係をこじらせていく。解散を誓った最後の全国ツアーの道中、少しずつ明らかになるハルレオの秘密と隠していた感情。

すれ違う思いをぶつけ合って生まれた曲「さよならくちびる」は秦基博による若い二人の慟哭を表現。ライブで淡々と歌う様が随所に盛り込まれ、観客はライブを楽しんでいるような瞬間も味わえる。あいみょん作による挿入歌「たちまち嵐」「誰にだって訳がある」も現代っ子らしい歌詞が胸に刺さる。さてラストはどうなるのか?は観てのお楽しみ。5月31日よりロードショー予定。

©2018 Yamaha Music Entertainment Holdings, Inc.

最後は、映画というよりミュージカルのダイジェスト版?

中島みゆき『夜会工場VOL.2』劇場版は、過去19作からえり抜かれた名場面を集めたもので29曲と2篇のポエムが収録されている。芝居と歌が絶妙に絡み合い、時には離れ離れになったりと、観つつ聴きつつのあっという間の130分である。出演者には中村中、植野葉子、香坂千晶、石田匠などが加わり、ダイナミックなステージを楽しめる。

収録は、2017年11月26日から18年2月18日までの東京・大阪・愛知・福岡の4都市18回から選ばれた。中島みゆきファンでなくとも、その面白さとアート性を楽しむことができる。5月3日より全国ロードショー。 

音楽とファッションは、親和性が高い。映画とファッションもそうだ。人々の暮らしのトレンドがファッションにいち早く現れると考えれば、その広がりが音楽や映画にも影響を与えていると深読みしながら観たり聴いたりしてみるのも一考である。