久保 雅裕
境界を跳び越えろ
ユーチューバー達のポートレート写真展という、ちょっと変わった展覧会が8月23~25日に渋谷の並木橋近くのスタジオ4Nで開かれた。タイトルは「I AM …」。企画したのは、M.K.Mのスタイリスト・水野陽介、ヘアメイク・勝間亮平、フォトグラファー・michiの3人。「【カメ五郎】ネイチャー・ポケット@You Tube」「コレコレチャンネル kore Tube」「杉山美帆の美スイングゴルフ」「日本一のマジシャン ポンチ」「ミルクティー飲みたい」「もこうの実況」「よみぃ」「李姉妹 ch」「jun channel」「Kohachannel」「mituaki TV」「syoma kusumoto」の12人のポートレート写真が並んだ。
ファッション業界に身を置く者としては、インスタグラマーの方が身近で、ユーチューバーは少し程遠い存在と感じる。ファッションを伝える手段としての映像はいささか大袈裟、かつ大掛かりな気もして、写真の方が雑誌同様に、親和性が高いのと、そこまで手間暇掛けても効果が読めないというところだろう。但し、最近は著名ユーチューバーの店が盛り上がっているなど風向きは変わりつつあるのも、注視しておくべきだ。
さて、このユーチューバー達はツイッターやインスタのアカウントも持っている人がほとんどなのだが、ユーチューブのフォロワー数は数万人規模にもかかわらず、インスタやフェイスブックのフォロワーは2〜3千人という規模で大きな落差がある。会場を提供したスタジオ4Nスタッフの話では、ユーチューブとインスタのフォロワーが意外とリンクしていないそうだ。インスタでは、ファッションのお手本的にフォローしている層も多く、またインスタ映えする写真に興味をそそられるが、ユーチューブは蘊蓄であったり、連続するストーリーの面白さをリアルに伝えてくれるので、その情報量は半端なく多い。だが、その分「手軽に」とはいかず、デバイスもスマホではなくパソコンが主流だった。だが、ここへ来て5Gの登場により、スマホセントリックな階層にも手軽に映像が楽しめる時代になると、半端ない情報量の映像表現への傾倒が進むのかもしれない。
もう一つこの企画の面白さを感じたのが、普段、ファッションと関わっているメンバーが、全く畑の違うユーチューバー達にフォーカスした点だ。境界線を越えていく企画趣旨が心地良い。いやむしろ境界線を「無意識」のうちに意識していること自体が、そもそもマイナスなのだと気付かされたのだ。フェイスブックや検索履歴から、より親和性の高い情報ばかりがアルゴリズムによって導き出され、気が付けば狭い世界の情報にのみ、どっぷりと浸かってしまっていることにドキッとさせられる。意識しないで目に飛び込んでくる広い情報は、一覧性のある新聞や雑誌、あるいはリアル世界に広がる視界にのみ存在する。それをキャッチアップする力が衰えた時、成長の鈍化が始まるのではなかろうか。歩きながらのスマホは危険も伴うが、情報の偏りの危険も孕んでいることを忘れてはならない。さあ、スマホから顔を上げて、街に目を向けてみよう。