久保 雅裕
益子に若手作家が集まる理由
「石岡信之 個展」Style hug Gallery 2019年11月16~21日(11~18時・最終日17時まで)
陶器市で有名な栃木県の益子町を訪れた。益子は陶器の産地としては比較的新しく、わずか160年ほどの歴史だ。茨城の笠間焼で修業した大塚啓三郎が窯を築いたことから始まり、大正末期から昭和にかけて「民芸」運動の推進者、濱田庄司によって広められたという。益子で「ハマショウ」と言えば、浜田省吾ではなく、濱田庄司だ。おやじギャグで失礼。さて1966年に始まった益子陶器市は毎年2回、ゴールデンウイークと11月3日前後に開かれ、500近くのブースが軒を連ねる。出展者は陶器のみではなく、地域の産品やクラフトなどもあり、気軽に楽しめるマルシェとして、春秋で約60万もの人を集めるほどになっているそうだ。多くの作家が移り住んで拡大してきた益子には現在250ほどの窯元があり、50もの陶器店がある。他の産地との決定的な違いは、「粘土や作法、作風について益子のルールに則っていないとダメ」というような縛りが無く、作家がそれぞれ自由に作っている点がある。それが若い作家が魅力を感じて移り住んでくる理由にもなっているのだろう。
さて筆者はというと、この混雑する陶器市の時期を避けて、あえて平日に街を訪れた。陶器店の並ぶメインストリートのそばには、益子陶芸美術館がある。「土と抽象―記憶が形に生まれるとき」と題した企画展が開かれており、内外9人の作家の抽象的なオブジェ作品が展示されていた。会期は2020年1月13日まで。
益子陶芸美術館
美崎光邦「青彩器」
泉田之也「積層」
その後、以前「アーバンリサーチ・ドアーズ」のカフェなども手掛けた「スターネット」を訪ねた。落ち着いた時とナチュラルなフード、アパレル、食器たち。そして静かな時間を過ごせそうなカフェ。ここで学び、旅立っていった人たちが、また新しい店を出して、益子の魅力を高めているそうだ。
スターネット
最後に若手作家、石岡信之の窯元を訪れた。シンプルで飽きのこないデザインの作品をガス窯で作っており、2019年11月16日から新宿・初台の「Style hug Gallery」で個展が開催される。会期は21日までで16日には作家が在廊する。日常使いできる温かみのある器で美味しい時間を過ごす。そんなアートを身近に感じられる大切な時を丁寧に過ごしてみたいものだ。
シンプルな作品の数々
ガス窯で作る
轆轤は2台あった