久保 雅裕
ネットの広がりは世界の小売価格差を暴き出す
2019-20AWのプルミエールクラス会場(※写真と本文は関係ありません)
世界的なEC(電子商取引)の拡大が、オープンプライス制度を揺るがしている。
日本は長らく希望小売価格(RRP/recommend reatail price)に対する掛け率という考え方で、全国同一小売価格による市場の安定化を図ってきた。少なくともプロパー時期は、どこの店に行っても同じ小売価格で、例え掛け率が低い、すなわち有利な条件を引き出せる大手小売企業であっても、プロパー時期は価格的な優位を作らせない市場が維持されてきた。しかし、最近これに大きく斬り込んで来たのが「ゾゾアリガト」だったと言えよう。前澤氏は「他の大手ディベロッパー企業による会員向け割引への対抗措置である」といった趣旨も述べている。ただしディベロッパーは一時的なキャンペーンのみなので、常時ではない。とは言え一石を投じた事は確かだ。
一方世界に目を向けると、海外取引は、そのほとんどが下代取引のオープンプライス。小売価格は、価格決定権を持つ小売店が決めるのが当たり前だった。しかし、ここへ来て様子が変わってきたという。卸先のEC小売業や実店舗の自社ECもあり、ネットを通じて小売価格が消費者に丸見えになってしまっている現状があり、もはや好き勝手に小売店が小売価格を付けていては、ECにおける競争に勝てないという状況になってしまっている。EUにおいても越境EC含め、同じ問題に直面しており、「RRPを決めて欲しい」と要望されるケースが増えてきている。当然だが今までのようにFOBの3〜4倍などつけられなくなっており、出し値への風当たりも強くなっている。
最終的な価格決定権は小売側にあるからオープンプライス制度が崩れたとは言えないが、事実上、RRPの設定を望まれる事によるオープンプライス制度の形骸化が起こり始めた訳だ。これから物流の効率化が図られ、より一層の小売価格の平均化が進めば、事実上オープンプライス制度の崩壊へと繋がるかもしれない。近い将来、一定エリア内でのRRPの設定とそれに合わせた粗利確保に知恵を絞らねばならない状況となりそうだ。