久保 雅裕
ショールームと小売りの力関係次第では
トラノイのショールームバージョン「TRANOI WEEK」2017年9月(写真と本文は関係ありません)
海外のショールームでは、インターナショナルに展開しているところと、ローカル中心で動いているところの2種類がある。インターナショナルで有力ブランドを扱っているところは比較的強気の取引条件を提示し、小売り側もブランド欲しさに、条件を飲んでいるというのが実態だ。一方、小さな個店を対象としたローカルで踏ん張っているショールームで、それ程強いブランドを抱えていないところでは、国内での回収リスクも抱えながら営業しているところも多い。日本国内における卸ビジネスを考えれば、それも納得がいく。国内のアパレル卸や輸入卸では、信頼関係も築かれており、デポジット(前金)無しの掛け売りという構図が多い。そういう意味で、海外への販売は、回収リスクが高いので、前金をもらい、COD(キャッシュ・オン・デリバリー)でという仕組みになってくるのも頷ける。
日本から直接、合同展出展なり、自主的なショールームを開くなりして、受注を取り、前金とCOD取引を提示する。デポジットは、30%が普通だが、50%というところもある。海外の小売店も、初回はこの条件を飲んでくれるが、2回、3回と取引が続けば「そろそろ信用してくれよ」とばかりに、前金無しや掛け売りを要求してくるようになる。あるいは、「はいはい、分かりました」と言いながら、「前金を入れなくても、生産してくれるだろう」と高を括っている図々しい小売店も少なからず存在する。
現地のショールームに依頼した場合、このショールームと小売店との力関係次第では、弱気な取引条件を受け入れざるを得ない。それは国内卸と同じ環境なのだから、ある程度は仕方ない訳で、確固たる信頼関係作りと与信を常に測っていなければならない。その信用調査と情報収集の正確さが、頼れるショールームかどうかの鍵となるかもしれない。
いずれにせよショールームを使うという事は、その分だけ小売価格がアップする。それでも代えがたい営業力と販売実績を稼げると判断するなら、その道を選択することも十分に考えられる。だが、ただでさえ高いと言われる日本ブランド。円安傾向が強まっているとはいえ、実際に販売されるであろう小売価格を想定し、マーケティングリサーチした上で、そこから競争力の有無を判断していくことが賢明と言えるのではなかろうか。
国内市場が縮小する中、海外販路開拓を進める企業が増えていくことは間違いない。明らかにビジネストレンドとなっているが、事はそう簡単ではない。「出したら売れる」という情勢ではないのだから。リサーチはキチンとやりつつ、機を見て敏なる動きも必要だ。