久保 雅裕

2018 16 Dec

アドレナリンが出るような服を、世界の片隅に居る人に

TACASI

一昨年、パリで日本の大手セレクトショップバイヤーを数人取材し、記事を書いた時に何人かに言われたことがある。それはバイイングにあたって「オリジナルで作れてしまうものは要らない」というものだった。それ故、「トレードショーを回っても、なかなかこれといった物が見つからない」とのボヤキにも聞こえたものだ。実は、同じことを繊研新聞社在職中にIFFの会場でも聞いた覚えがある。という事は、かれこれ10年以上前のことなのだろう。「合同展に参加してセレクトショップに買ってほしい」と思うなら、ちょっとやそっとでは真似できないモノづくりと「ハッとさせる」ような要素が必要だと言えるだろう。

そもそも日本の大手セレクトショップのように、数十店舗もの多店舗を展開し、そのスケールメリットを生かして、オリジナル商品を開発し販売する形態の専門店は世界には珍しく、ほとんどが数店舗レベルの専門店というのが実情だ。したがって、定番的な商品も仕入れに頼らざるを得ず、それなりにトレードショーでの買い付けも妥当なスタイルとなっている。この点においては日本の特殊性と言わざるを得ない面がある。

しかし、ここに来てセレクトショップのオリジナルがあまりにも飛躍的にデザイン性を高め、エッジの効いたものも出すようになってきた。デザイナーズブランドの十八番を奪うような勢いだ。来春夏のプレビューを回っても、その兆候を感じるものが多かった。

インターナショナルギャラリービームスのメンズでは、「tacasi」というパンクロックテーストのブランドを出した。

同じくウィメンズのレイビームスでは、「RBS」という少し尖ったオリジナルブランドを展開している。

RBS

DRAWING NUMBERS

パルグループのドローイング・ナンバーズでは、ラウンドさせたもう1ラインのボタンで、留め方によって変化を楽しめるシャツを出していた。

ローズバッドのオリジナルブランド「mici」では、紐をベルトループから首へ回して、アシンメトリーな装いが楽しめるスカートや一枚の布で胸元をオープンにできるリネンドレスなど凝った作りで攻めていた。

mici

VERMEIL par IENA

ベイクルーズのオリジナル「VERMEIL par IENA」では、なんともゴージャスなジャカードのセットアップを披露していた。

このような日本のマーケットを考慮すると、ブランド側としては、沢山は売れないが見せ筋になるようなトンガリ商品か、それなりに裾野はあるが、オリジナルで作るにはリスキーな素材やテクニックが盛り込まれた商品が落とし処となってくる。

ただ後者はそれなりの数字にはなるが、前者は積んではもらえない。となると世界の片隅に居るであろう、トンガリ商品が好きな人々に届ける手を考えねばなるまい。アドレナリンが出そうな商品なら、インスタで見つけて買いたいとメッセージが来ることだってあるのだ。

IT活用時代の昨今、この分野での取り組みにも積極的になっていかねばならない。しかしアナログフィルターな私には、ちと荷が重い(^-^; チャンチャン!!