久保 雅裕

2018 17 Dec

「アグレッシブ」な姿勢はマーケットの成長性で決まる

ソレイユトーキョー・アドバイザーのビームス・南馬越一義さん

来年2月の「SOLEIL TOKYO(ソレイユトーキョー)」の陣容が固まった。2月4~6日、会場は前回同様、「EBiS303」だが、イベントホール内ではなく、窓面のホワイエを使って開かれる。出展者数は38ブランドでレディス、メンズウェアや服飾雑貨、ライフスタイル雑貨も揃え、好評だったアドバイザー制度は、より充実させていく予定だ。

主催がJTBコミュニケーションデザインから戻ってきたというのもあるが、一番の狙いは、今の時代感、気分を反映したものなのだ。それは、世界的に見てもトレードショーがビジネスマッチングの役割を果たせなくなってきていると感じている点にある。高止まりする出展料に投資効果が見合わなくなっていることも出展者側としてはあるのだが、それ以上に来場者にとって大規模な会場でのストレスや徒労感の方が大きく、最後には新しいものを発見する意欲や感受性も減退してしまう状況が生まれている。とりも直さず先進国での消費の低迷(一部、二極化する高額消費は別として)による買付意欲の減退とも相まって、更にトレードショーでのマッチングを厳しいものにしているからだ。今、バイヤーや業界人に必要なのは、「よりコジィで親近感の湧くパーソナルな繋がり、コミュニティーの安心感では」と考えた。

そんな中で、よりゆったりとサロンやラウンジのように心地良く語らいながら、情報交換やブランドの紹介ができる場の必要性を感じたのだ。一般的にショールームは、場所代と営業手数料を取ってセールス代行を行う組織だが、昨今、セールスは行わずにミニ合同展のように行うショールームという名の形態がパリでも散見できるようになった。例えばトレードショーオーガナイザーが行なっている「トラノイウイーク」「マン/ウーマンショールーム」や「キューブ」など。しかしソレイユトーキョーは、1ラックのみからの展示で、時期的に早見せという性格上、その場でのセールスは成立し得ない為、このようなビジネスマッチングの場であってもショールームスタイルがしっくり来るのではと考えた。

プレイタイム・パリ18年1月展

もう一つのチャレンジは、パリの子供服トレードショー「playtime(プレイタイム)」の東京展との併催だ。ファッションからライフスタイルへの垣根越えが既にひと段落した中で、子供と大人の業界でも際を越える動きが一部起こっており、子供服の店が大人服導入に意欲を示していたり、またその逆も望めるとの観点から、協業メリットを感じた訳だ。あくまでも双方実験的な立場で前向きに取り組み、固定的に考えず、検証していくつもりだ。

さて、こうして見ると先進国のバイヤーはゆったりとした雰囲気で商材を探すことを求め、中国やロシア、東欧諸国など経済成長の著しい国々のバイヤーは、アグレッシブに展示会場を動き回って買付している様子が窺える。その国の気分が大きく反映するものだと感心するが、翻って我が国でもC2Cマーケットの「メルカリ」や「デザインフェスタ」「日本ホビーショー」などが大きく盛り上がっており、熱気が溢れている。そして何といってもIT分野のアグレッシブさは、誰もが知るところだろう。ベンチャーや起業家たちの元気いっぱいな姿は、70~80年代のアパレル・ファッション市場を想起させる。

ファッション産業の活路という観点から見ると、国内ではITとの融合、海外では新興国へのアプローチがよりアグレッシブな戦略的方向性だと言える。一方で、近年のトレンドキーワードで外れることのない「リラックスムード」。これも現実の反映と見るべきだ。リラックスとアグレッシブ2つの軸をバランス良く睨みながら、事業展開を図っていく必要がある。