久保 雅裕
逆輸入からヒットを狙う
両手にバンドを付けて振ったり動かしたりすると様々な音がアプリを通して飛び出してくるというトイ、「SoundMoovz(サウンドムーブズ)」がアマゾンプライム会員限定で、3月15日まで先行発売されている。ブルー、ピンク、パープル、ブラックの4色展開で価格は7800円(税別)。この商品は、もともとダンサーだった楠大吾さんが鉄鋼商社の新規事業でDmetProducts(ディーメットプロダクツ)を立ち上げ、考案したもので、「DMM.make AKIBA」のプラットフォームを活用して開発を進め、そこでのプレゼンでこの商品に異常なほどの熱意で興味を持った英国人、ニノ・サイバーパルのニコ・ニコリッチさんと意気投合。結果的に英国の見本市への参加から営業をスタートする事となった。米国のテレビで取り上げられたり、イタリア、スペインなどでテレビCMを展開するまでに至り、気が付けば海外17ヶ国で40万台が出荷されるヒット商品にまで成長した。そして満を持して、2月15日からの母国日本での発売となった。
アプリの中では400種類の音源を選ぶことができ、また自身の声などを録音したサンプリング音源も使える。発売発表会では、キッズダンサーの声をサンプリングし、ドラムの音を大人のダンサーと楠さんが担当して、プレゼンテーションして見せてくれた。
こうした海外から火が付いて、ある意味「逆輸入」のような形で日本での発売を開始する事例は、ファッション業界でも散見される。ある大阪のシャツのみのブランドは、パリの「アトモスフェール」に出展して、トゥモローランドなど日本の大手セレクトショップから受注を得ていたが、日本では展示会を開催していなかった。その理由は「大阪のメーカーだと下に見られて、買うてくれへんのです」(変な関西弁かな?筆者は東京生まれの東京育ちのなので許して!)との事。あるいは先月のパリメンズファッションウイーク中の「カプセル・マレ」で出会ったメンズカジュアルのメーカーも「日本ではあまり見てもらえないので、思い切って海外からスタートしよう」とパリに出展していた。「加工に更に加工を施したような凝った素材は海外の方が注目してくれるから」とも語っていた。
さて前述のサウンドムーブズは、結果的としてニコさんとの出会いから海外先行となった訳だが、日本人の気質として、海外の良いものや新しい技術を貪欲に取り入れて使いやすく改良し、あたかも自分達で作ったかの如く独自の文化へと昇華させる技というか癖というかは、世界に無い特徴と言える。ラーメンや自動車も典型例の一つだろう。そんな性質を逆手に取って、海外での実績を引っ下げての母国への導入。これも一つの戦術としては、使いようがあるのではなかろうか。