北川美智子

2023 22 Mar

2024-25A/W PremiereVision Parisについてのプレスカンファレンス

 PVパリのジル・ラスボルト ゼネラルマネージャーによる2024S/S展の総括と7月開催の2024-25A/W展に向けての変化するポイントについて3月15日プレスカンファレンスが行われました。
 2020年2月の展示会を最後にコロナ渦のもと、デジタルを駆使して情報発信しつつその間に従来の9月開催のAW展を7月に前倒ししたり、フィジカルとデジタルの両立でこの3年を乗り切ったことに感慨深いものを感じます。
 その経験を生かし又バイヤーの意見も取り入れ7月展では「エコレスポンシブル」に力を入れた新体制が組まれます。
 バイヤーがより迅速に的確に商品へのアプローチが可能になるよう国や地域に分けたゾーン構成を行うことが決定されました。
 大きな方向性として強く掲げられる「エコレスポンシブル」は「環境への社会的責任」と訳されていますが、地球上に棲む命あるものすべてを取り巻く環境や社会に対する責任であると考えます。
 1990年にファッション業界に初めて「エコロジー」というテーマを示したPV ですが2シーズン続けて同じテーマを打ち出したことで世界に大きな衝撃を与えましたが30年経った今、ますます重要になったエコへの新たな取り組みに注目したいと思います。

 カンファレンスで発表された概要は次の通りです。

 

〇2023年2月開催の来春夏向けPVパリ展
 2月7~9日に行われた2024S/S展には35500名の来場者があり、7か月前の22年7月比48%増、22年2月比62%増となり回復の兆しは明らかである。
 来場国のトップ5は1、フランス、2、イギリス、3、イタリア、4、スペイン、5、トルコ。来場者はフランスが30%で残りの70%はフランス国外からとなっている。
(2024S/Sの素材トレンドについては次回のまとめでお伝えします)

〇2023年7月に向けたPVパリ展について
 このところ大きなテーマになっているサスティナブルは当然のことながらエコの本筋でもあり、SDG‘sなど社会的なムーヴメントにもなってきたが、7月のPVパリ展では大きな改革として「エコレスポンシビリティ」を考え方の中心に置き、「新たな会場構成」、「モード情報とトレンドフォーラムの大々的な刷新」、「バイヤー向けサービスの新ポリシー」の四つの軸を打ち出した。

〇四つの軸

(1)エコレスポンシビリティへの取り組み

 主催者として:
  ・再利用可能なブース作り
  ・LEDの採用
  ・再利用を考えた資材と最適な利用のためのガイダンス
  ・エコな素材を使った印刷や案内表示
  ・カーペットや外装材のリサイクル
  ・木材、プラスティック、紙、ダンボールなどの分別回収とリサイクル
  ・売れ残り食品をフードバンクに寄付

 出展社に向けては:
  ・複雑な変化に対応をしやすくする支援
  ・各取り組みをフォーカスして明確に展開できるように支援
  ・エコレスポンシビリティの為のアクションをPRして企業活動を応援

 バイヤーに向けては:
  ・エコレスポンシビリティの現状を解読し情報を提供
  ・ピクトグラムの活用
  ・出展社の提案と素材情報を分かりやすく提供する
  ・環境と人間を尊重する設計やデザインによるサービスの提供

(2)見本市の新たな会場構成

 2023年7月PVパリ展ではホール3から6までの4ホールを使用。
 出展社(サプライヤー)の地域と特性を際立たせる試みがなされる。
 ファブリックはホール5ではヨーロッパのサプライチェーン、ホール6では欧州以外のテキスタイルメーカーが国別に分かれ出展。
 日本の出展社は5と6号館のつなぎ目の位置に予定されている。

 主な構成は:
 ホール3 ・ レザー
 ホール4 ・ アクセサリー(服飾資材、部品メーカー)
 ホール5 ・ ファブリック(ヨーロッパのファブリックをターゲットとするマーケットや製品をシャツ、
               カジュアルウエア、ニット、スポーツ、シルクなどのタイプ別に展示)
       ・デザイン(プリントや刺繍などのテキスタイルデザイン)
 ホール6 ・ ファブリック (国際的なサプライチェーンとして欧州以外の素材メーカーが国別に出展)
         ・ヤーン (糸とファイバーのメーカー)
         ・マニュファクチュアリング (縫製などのソリューション提案)
         ・イノベーションハブ (デジタルやテクノロジーを駆使した環境負荷低減技術をテーマとしたキーステーション)


(3)進化するトレンド情報

 三つのトレンド情報の発信エリアが設けられる。

 □インスピレーション・フォーラム (ホール5)
  ・シーズントレンドの分析
  ・ファブリック、レザー、アクセサリーの横断的に厳選されたシーズンを代表する500品の紹介
    ・シーズンのイメージを伝える映像
  ・カラーパレット

 □ソーシングソリューション・フォーラム (ホール6)
  素材の理解に効果を上げるために五つのゾーンに分け1500の製品が紹される。
  ・スポーツ&テック: スポーツ&アウトドア   ランジェリー  スイムウエア
  ・エッセンシャル: ニット  フォーマル  カジュアル(デニム&リラックス) シャツ
  ・デコレーション: プリント  シルキー  ジャカード  刺繍  レース
  ・マニュファクチュアリング: コート ジャケット ソフトウエア Tシャツ アクセサリー
                  レザー ニットウエア シャツ テーラリング スポーツウエア
  ・エコイノベーションエリア: PVの六つのサスティナビリティ基準、スマートクリエーションインデックス、
                  ヤーンインデックス、サスティナブル素材へのフォーカス

 □レザー、アクセサリー、テキスタイルデザインの三つのエリアで各々に設けられるインスピレーションエリアでの情報提供 

(4) 来場者へのサービス

 すでに実施されているものを含め更により良いサービスの為に九つの事柄が強化され提案される。
    ・モバイルアプリ
    ・インテラクティブマップ
    ・出展社ブースのQRコード
    ・ファッションインフォーメーションデスク(ホール6)  バイヤーの相談に応じる
  ・エマージングブランドデスク(ホール6)  新進ブランドの効率のよい会場めぐりをサポート。
                            見本市トラノイのスタッフがサポート。
  ・エコインフォーメーションデスク(ホール4) 会場に出展された製品の問い合せに応じる。
  ・各国語によるガイド付きフォーラムツアーの実施。英、仏、伊の他新たに日本、韓国、中国語が加わる。
  ・スマートテックエリア  テクノロジーとデジタル技術に特化したイノベーションの発見のためのアシスト。
                 フランス語と英語のガイド付きツアー。
  ・リラクゼーションエリア


 以上、プレスリリースおよびプレスカンファレンスの概要をまとめました。
 コロナ渦がもたらしている諸問題や戦争をはじめとする社会の難題の解決に向けて、各々の立場からできることに参加していきたいと願っています。