北川美智子
Premiere Vision Paris 2024S/S・トレンドテイスティング 概要
三年ぶりにフィジカル展に活気が戻り、次のステップに向けて新しい試みが積極的に行われる展示会となりました。
この三年間を通して使われた「Sustainable」にフォーカスしたキーワードは今シーズンも作る側から買う立場まで重要な意味を持ちます。
これに更に今社会で起きている現実(reality)を見つめ、諸問題を解決するためのエコノミックセンスとエコロジックセンスの相乗効果を引き出す強いイメージング能力が必用となるでしょう。
現実をしっかりと受け止め明るい未来に向かって「Dream your reality」という総合テーマが設けられました。
2024S/S PVが提案する素材の方向性とキーワードをまとめました。
(1)カラーの特徴 (カラー資料は前回648,649回を参照)
7色ずつ4つのグループで構成され全28色が提案された。
1のグループ 1~7
Versatile shades 多用途なシェイド
(ambiguous dream 曖昧な夢)
少しメランコリックでミステリアスなスモーキーカラー
2のグループ 8~14
Radiant luminousities 輝く光度
(visionary reverie 先見の明がある空想)
エネルギッシュで刺激的な光度を持つカラーレンジ
新ナチュラルとデジタルの融合
3のグループ 15~21
Quiet naturalness 穏やかなナチュラル
(sustainable idealism サステナブルな考え方)
静寂で慈愛に満ちた自然の色。
ナチュラルを代表する色。
4のグループ 22~28
Magnetic intensities 惹きつけられるような迫力
(primal imaginings 最初に想像すること)
現実を見つめる強い力
深いブライトカラーやドラマティックなダークカラー
以上の28色は素材本来が持つ色であったり光りを当てられたり、透けたり反射したりしながら現実を見つめなおし、未来に向かって夢を与えアイディアを生みだすものである。
2024年S/Sに向けて新たに注目したい色として次の7つの色の使い方が提案された。
1) plural whites 白がいっぱい!
ニュートラルカラーとしての白
白を強調する色との共演
白のレイヤード
2) beyond neutrals ニュートラルを越えるニュートラル
ニュアンスを引き出すグレーの役割
ハイライトとしてのグレー
特性を発揮するグレー
シネ調のグレー
ちょっとしたカムフラージュ
デリケートなニュートラルの表現
ぼやけた明暗法を作る
ラスティックな表現
洗練された起毛処理
ニュートラルや3色使いを少し和らげる。
3) cool pastel クールパステル(カッコよいパステルカラー)
デニムのパステル
パステルのカラーブロック
テラゾ(砕いた花崗岩)のパステル
パステルのバイブレーション
パステルとのコントラスト
グラフィックなパステル
シャドウパステル
スポーティーなパステル
光り輝くようなパステル
パステルを卒業したパステル
玉虫色のパステル
4) luminous acidity 光りを帯びた酸性色
レモネードやクロロフィルのグリーン
生のままの酸っぱい色
チョット見え隠れする酸性色
格子柄の酸性色
酸性色のグランド(地色)
光沢とブルー味を帯びた酸性色
インクの様なエレガントな酸性色
酸を帯びたようなブルーとニュートラルの交流
寒・暖のバイブレーション
マルチカラーの格子柄
5) intense pigments 濃密なピグメントカラー
コントラストを持ちながらハーモニーを作り出す
オーナメントの様なブルー
温かみのあるブルー
満たされた2色使のジオメトリックでモダンなDUOの考え方
浸み込んだような(含侵)ホットとコールド
ビビッドなマルチカラーのストライプ
パンチの効いたグラフィックな使い方
6) essential warms 基本的なウォームカラー(暖色)
24S/Sシーズンは暖色やウエットな色を忘れずに
海藻やヘンプからピグメントまで環境を意識した黒
新しい方法と表現で新たな黒が作られる
ダイナミックなダーク 繊細なダーク
浮かび上がるようなダーク
モジュラーでつなぎ合わせたようなダーク
押し黙ったような色
何かを振りかけたようなグラフィックな表現
(2) DECORDINGS 素材の方向性
素材は二つの「reality」の追求がなされた。
1 Virtual reality 実際の、事実上のリアリティ
VRは通常「仮装現実」と解釈されているが、ここでは表面的には現実ではないが本質的には現実。
非現実の体験によって限りなく本質に近い体験が得られる。
仮想現実から得られる本当の現実。背景にはテクノロジーが存在する。
1) blurry filter ぼやけたフィルター
シック メランコリック エコイノベーション 滲み
虹 輝き ビデオゲームを観るよう デジタル
動くことでシルエットとデコレーションが生まれる
ストライプ シネ ニット スポーツウエア
クロマティック(彩色される) オーガンザ 透ける
レザー; ピグメント スモーキー ソフト しなやか
グレイッシュ ニュートラル オレンジ パティナ プリント
2) luminous vibration 光るバイブレーション
リアリティと夢の世界の間
透明さ 光感 微妙さ 輝き
積極的に取り入れられるようになった光沢を更に発展
シネからシャイン(微妙な色の変化から輝きへ)
コーティング レフレクション(反射) プリント 刺繍
ナチュラル 羽のように軽くて光る布 フィルム
ジャケット
レザー; マイクロスキン 軽量 ナチュラル ビンテージ感
3) precise lightness まさに軽い!
インビジブルテクノロジー(目には見えないテクノロジー)
軽さをデザインする テクノロジーを駆使
ドレスやジャケット モダン ニット トップス シャツ
テーラリングもスポーツウエアにも
レース 穴あき ネット 透け感 ジャカード
極小チーフのネット風 プリント 薄い
レザー: チェーン状に編む メカニカルマイクロデコレーション
シャドウがかったプリント 裏にプリント 透ける
2 Augmented reality 増強されたリアリティ
フィジカル リアリティ センシビリティ
1) second skins 第二のヒフ 肌に近い
ランジェリー フィラメントニット しなやかなトップス
アシメトリーなボディスロープを作り出す
光沢加工したジャージー 自然のストレッチ性とメカニカルなストレッチ シンプル
レザー; 軽い 薄い ボディジャケット
2) expert density ものすごく緻密
高級感 滑らか ハイクオリティ 洗練
マットな表面感と光沢 しなやかでもハリ感
ジェンダーを問わない
サテン ダブルフェイス 3シーズン着られる
コットン コンパクト パーカー トレンチコート
プリーツ テクニカルプリント ジャカード
レザー; シルクの様な表面 ラグジュアリー しなやかな布のよう
光沢 サテン風 ダブルフェイス スポーツウエアにも
3) refined rustics ラスティックな高級感
自然との係わり アーティフィシャルとナチュラルのコントラスト
科学と自然の両方を持ち合わせる 化合繊×ナチュラル
ジャカード レース風ジャカード 透けるレイヤード
クラシックなグラファイルパターン アルチザナルな装飾
リネン ヘンプ アーキテクチャー風 シルキー
麻にプリント ダイナミックな椰子の柄 樹木柄
2024 S/S素材の三つのポイント
1 sophistication 洗練
テクニックを存分に使いながらもシックであること
2 high precision 高精度
環境 デザイン マテリアルの三位一体
3 phygital creation (physical×digital) リアルとデジタルの融合
フィジカルな世界と夢の結合 進化の目指すもの
※写真はプレスリリースから生地や会場内のフォーラムの様子を切り出したもの。