北川美智子

2022 02 Aug

2023-24 A/W Premiere Vision 2 素材の方向性とキーポイント

 PV Paris展はアパレルのものつくりに向けてのシーズン対応が以前より検討されていましたが、各段階でのスケジュールの見直しや販売の変化に追従する形で、これまでの9月開催が7月へと前倒しになりました。
 2020年から続いているデジタルとフィジカルの併催で、2022年7月4~8日(デジタル)、5~7日(フィジカル)の通しで5日間の日程が組まれました。
 新しい日常やエコ、リサイクルにどのように向かい合うかという意味で引き続き「Sustainability」の重要性が問われます。
 それには「Eco-responsibility」が根底にあり、更にこれを持続していくために環境、エシカル、トレーサビリティなどが重要なキーワードになります。
 クリエーションに向けたアプローチとして三つのポイントが挙げられました。
    
○frugal creativity  エコデザインにもクリエーションを。
                   身近なモノ、見慣れたものにもクリエーションを。

○contemporary reinterpretation  歴史上の美への関心とメタバースやアバターの共存。

○bursting expressivity 唯一無二を求めての直観的で実験的な挑戦。
                  非常識に近いアプローチをも容認する表現の豊かさ。
                  気楽  気まま

 素材トレンドを示す三つのテーマ
(1)ESSENTIAL SINGULARITY  {卓越したエッセンシャル}
        見た目や触感に新しい価値を付加し、今までのエッセンシャルを
        新たに見直す。
(2)OPPULENT SOBRIETY  {抑制的であるがリッチ}
    独創性の新たな表現方法として「簡素」や「抑制」が挙げられる。
    シンプルであっても実はリッチ。
(3)EXCEPTIONAL IMPERFECTION  {例外的不完全さ}
        本物を意識しつつ、未完成矢粗削りの魅力を探る。

各テーマのキーワードと素材を簡単にまとめました。

 ・ ESSENTIAL SINGULARITY
 エッセンシャルを見直し付加価値をつけることによって、クラシックやベーシックを新たな必要不可欠なものにする。

・beyond basics (a) 表面変化のあるもの
    より複雑な織組織の無地  ユニークなクラシック  ストラクチュアのあるもの
    ハニカム  凸凹感  ハウンドトゥス  ツィード  チェック  ミニチェック
    意外な配色
    ジャケットやブルゾン用  ビンテージ風スーツ 華やかさのあるジャケットやスカート

・beyond basics (b) ハウンドトゥスとシェパードチェック
    バリエーションいっぱいの千鳥格子  プリントやジャカードでも表現される
  シャツ  ジャケット  パンツ  配色を楽しむ  ピュアウールのコート

・natural performance エコと実用性を兼ね備えた素材
    機能性がありながらケミカルフリー  アウトドアにもシティウエアにも
    エラスタンに頼らないメカニカルストレッチ  生物由来のワックスコーティング
    スポーツの広い分野に関わる機能素材  コーティング  撥水  防水
    洗えるレザー  アンチバクテリア  堅牢性と耐久性  ダイアゴナル織 
    三層構造  
    アウトドア  ワークウエア  フィールドコート  デイリーなカジュアルウエア

・leather craft inspiration  伸縮性のあるレザー
    蜂蜜色やマホガニー色などのブラウン  クロコのエンボス  パリパリ感
    バッグに使われるようなエンボス加工のレザーがドレスにも
    ジャケット  スカート  ドレス  パンツ

・historical remix  歴史上の美が見直され、クラシックが新たな解釈のもとリミックスされ蘇る
  デコラティブ  オーナメンタルな幾何柄  ゴシック  アラベスク  レース  刺繍  プリントなどの装飾性
  ステンドグラス 刺しゅう入りプリーツ  スモッキング  ロマンティックでありダークファンタジックでもある
  フリルやチュール使い  ギリシャローマ時代の柱頭や胸像のモチーフ  廃墟や遺跡
  トワルドゥジュイ  高貴な貴金属加工にインスパイアされた服飾資材
  ボリュームたっぷりのベルベットのスカートやドレス
    



・ OPULENTSOBRIETY
 抑制的でありながら豊か  新しいシンプルの表現
 控えめでかつラディカル  簡素でリッチ
 内からにじみ出る様な豊かさ  オリジナリティが高くシンプルと同時にラディカルでサスティナブルでもある

・boosted tonicity  溢れる力を表現
    テイラリングやクラシックはよりルーズやリラックス感を増す。
  ボリューム感のあるブレザー  幅広のパンツはよりエレガントに  スニーカーが似合うスーツ
  包み込まれるような滑らかな素材のたっぷりしたコート
  一見抑制的ではあるが流れる様なラインを楽しむ長丈のコート
  シルクに近いウール  カシミア、アルパカ、モヘアなどのシンプルに見えて心地よい高級素材
  リサイクルコットンから作られたフェイクムートン  素肌に着られるソフトで繊細なレザー
  代替素材として注目されるアストラカンのフェイクでもあるウールのシープスキン  シルキーなジャカード
  刺繍  マーブルプリント  山脈や木の葉柄

・solidity perfected  完璧な堅牢性
    抑制的でありながら耐久性、丈夫でリッチな素材  質素なラグジュアリー  
  エレガント性を差し込む  ワークウエアのスピリットがあらゆるファッションに浸透する。
  フェルト状のメリノウール  薄手でコンパクトなニット  
  カシミアは洗練されたビッグシルエットのスエットやシャツに
  麻の様にも見えるシルキーなオーガンザ

・wormed-up softness  温かみのある柔らかさ
    ソフトな手触り  ベルベットの様な優しい手触り  クリーミーな素材

・特にmicro velvety surface に注目
    素肌にもまとえる柔らかさ  官能的な触感  Tシャツ素材として注目
    ウール/シルクブレンドは軽量のトップスに  エメリー加工のコットンはカジュアルシャツに
  ピーチスキンがアクティブスポーツウエアで注目
    リサイクルナイロンはふわっとしたショート丈パーカーに
    ピーチスキンはシルキー素材にも対応  
    シルク風手触り  ワッシャー加工  ソフトなベルベット風に  カジュアルに着こなすリラックスしたドレスやパンツ
  モールスキンの様なベルベット
  細畝のコーデュロイ  トラックスーツにはニットベロア  畝の様なストライプ状の刺繍
  プリースはポリエステルからコットンに  
  ウールフリース  コットンフリース  フリースはダブルフェイスから多層まで アウトドアの新定番になる
  反射、撥水機能も登場

・ EXCEPTIONAL IMPERFECTIONS
 例外的な不完全さ  粗削りの美を称賛する  不完全の魅力

・preciously raw  生のままの気品
    加工される前の自然な姿  コージーなソフトネス  スムースな動き
  ウールとモヘアのブークレ糸  アルパカ  シャギー  毛皮風  着心地の良さ  デジタルプリント
  ぼかし  写真プリント  ロマンティックではあるが甘すぎない花柄
  レザーの活躍  象のヒフの様(でもソフト)

・materials in the raw  完ぺきではないもの  イレギュラーなモノへの関心
    皮の様々な外見を自在に表現  ビンテージ風  再利用の魅力  
  レザーのあらゆる場面に登場  パンツ  トレンチコート  ボンバージャケット  Tシャツ
  しわ加工  グラデーション  クチュール風のビスチェまで幅広い  サスティナブルでありメタルフリー

・wildly rustic  野性的で粗野感のある
    グランジ回帰  素材にダメージを与えたかのような見え方  チャレンジ素材
    ハイクォリティ素材にダメージを与えボロボロになった様子のウールジャカード
  不揃いな糸使い  ラスティックに見えてもソフトなタッチ  コントラストの効いたカラー使いの砂嵐風のシネ
  麻ブレンド  ニードルパンチ  起毛  ぼやけたパターン  刺繍+ジャカード  詩風+フェイクファー
  不揃いのファンシーヤーンで無秩序な表現のツィードでパンクスタイルのジャケットやアウターに
  マットとシャインでできるぼやけた表現でラグジュアリーをあざ笑うかのようなシルク  ロングヘア  シークイン



押さえておくべき三つのポイント
・ QUOLITY
  常識とのバランスの取れた品質
  求められる質の良さとサスティナブルの間の良識あるバランス

・ SINGULARITY
  違いを際立たせる
  ユニークで特徴がある事

・ CREATIVITY
  創造的であること
  サスティナビリティとの共存

 

 

 写真はプレスリリースより 
        詳細および全容は次のサイトをご覧ください
                     https://www.premierevision.com/en/magazine/