武田 尚子

2025 13 Oct

「アール・デコとモード」展の見どころ

昭和100年に当る今年は、アール・デコ100年でもあり、日本国内でも「アール・デコ」にまつわる展覧会が各所で開かれている。
有楽町の三菱一号館美術館で、10月11日から来年1月25日まで開催されているのが、京都服飾文化研究財団(KCI)コレクションを中心にした「アール・デコとモード」(両者の共催)。今日の服装の源流となっている1920年代のファッションを中心に、女性の社会進出を背景にした現代的なスタイルが多く見られる。
服飾コレクションだけではなく、アクセサリーや宝飾品、香水、また絵画や資料類も充実しており、合計310点が展示されているが、ここでは私自身が特に気になった服飾の見どころをダイジェストで紹介したい(どれも実際に身に着けたいと思うものばかり)。

アール・デコの時代は職人の手わざが光るオートクチュール全盛期でもあり、今回の展覧会も、ポワレ、シャネル、ジャン・パトゥ、ランバン、ヴィオネと、1920年代のドレスを多数見ることができる。

 

中でも私が印象的だったのは、ラウル・デュフィのデザインしたテキスタイルを使ったポール・ポワレの作品。デュフィは20世紀フランスを代表する画家の一人で、ポワレがそのテキスタイルを起用していることは有名だ。その明るい色彩とリズミカルな線描が、新しい時代のモードを象徴している。

 

また、独自の抽象論を展開したソニア・ドローネーの絵画の前には、彼女のデザインによるコートが展示されていた。美しい色彩のグラフィックな魅力に満ちている。

 

そして、シャネル。後ろ姿にインパクトのある黒のデイ・ドレスや、ドレスとコートのデイ・アンサンブルなど、本当に美しい。
シャネルといえば、同時期に六本木ヒルズの東京シティビュー&森アーツセンターギャラリーで開催されている「la Galerie du 19M Tokyo」は、シャネルという有力メゾンの底知れぬクリエイションの広がりを実感させるものであった。

 

華やかさは控えめだが、この時代のドレスで私を引きつけて離さないのは、マドレーヌ・ヴィオネ。バイアスカットを駆使した造形性や、幾何学的なパーツの組み合わせは、革新性に満ちている。いかにも職人という雰囲気のヴィオネ自身の写真も展示されていて興味深かった。

アール・デコの名称は、もともと1925年にパリで開催された「現代産業装飾芸術国際博覧会(Exposition Internationale des Arts Decoratifs et Industriels modernes)」に由来する。時代は第二次世界大戦へと進むわけだが、その時代背景というものをもう一度検証してみたいと思う。