武田 尚子
「スールトーキョー」の存在感
いよいよインプットからアウトプットの時代に入ったと感慨深かった昨年に比べると、今年の「パリ国際ランジェリー展」は日本からの新規出展の動きがおとなしかったが、それでもこのブランドは特異な存在感を放っていた。
EXPOSEDエリアにあった「SOEUR tokyo (スールトーキョー)」。
衣服の内(ランジェリー)と外(アウターウエア)の境を取り払った新しいカテゴリーの“overwear”をコンセプトに、自由でモード性豊かなコレクションが紹介されていた。
デザイナー・ディレクターのsakuraさんは、文化学園大学在学中に趣味の写真で女性の身体の曲線美の美しさに目覚めたのが、ランジェリーに興味を持つようになったきっかけ。その後、今のコレクションの雰囲気からは意外に感じられるが、「ブラデリスニューヨーク」西銀座店で多くの女性の身体にかかわる仕事に就いたのが、貴重な土台になっているという。
2018年からは渡仏してランジェリー学校FORMAMODで学び、インターンなどを経験した後、2021年8月にブランドをスタートさせた。現在は出身地である埼玉県蓮田市のアトリエを拠点に、日本生産の物づくりをおこなっている。
2024秋冬シーズンのテーマは、“コケティッシュがデカダンスに出会う“。非常にフランスらしいテーマだ。一人の美しい女性が変化していく物語を、切りっぱなしのほつれた白い生地をはじめ、コーヒーの染みや墨染めによってエイジングを表現している。リボンが多用されているのは、心の中の絆や願いを託したもの。リボン同士でつなぎながら、ピースを自由に組み合わせコーディネイトしていくことができ、全部のピースをつなぐと最後はドレスに仕上がるというわけだ。
ともすると実用性や機能性ばかりに目が向いてしまいがちなランジェリーだが、手仕事の伝統に基づいた、デザイナーブランドらしいブランドが日本から登場しているのは興味深い。
さまざまなアイデアが盛り込まれたsakuraさんのデザインノート