武田 尚子

2022 17 Oct

ヌードベージュの多幸感

ファッションを構成するのはいろいろな要素があるが、最近、改めて、色の比重の大きさを感じている。
特に心理面への影響からいうと、肌ざわりや着心地といった触感も大きいが、まず視覚から飛び込んでくる色の持つ力に勝るものはないのではないだろうか。触覚は極めて主観的なものだが、視覚的な色は周りへも作用を及ぼす。

世界的にみると、2023春夏シーズンのランジェリーも色が重要で、非常にカラフルになっている。トレンドカラーはこれと限定できないような多様性がある。
それだけにというか、だからこそというか、多彩な色の中でひときわ強い印象を残したのが、ベージュ。ヌードベージュともいえるような、美しいベージュだ。

「2022パリ国際ランジェリー展」で印象的だったのが、オーバドゥのSENSUAL EUPHORIAライン。2023春夏のシーズンテーマである“EUPHORIA”(多幸感)を極限まで追及したようなプレステージ性の高いグループである。
ジャガードレースにケミカルレースのトリミングと、複数の素材を組み合わせたうえに、細いストラップや大きなゴールドのリングなど、ボンデージ感覚の巧妙なディテールが特徴となっているもので、おしゃれなブラレットスタイルも変化に富み、バックスタイルも非常に凝っている。色はラグジュアリーな(ややピンクがかった)ベージュ一色にしぼって、繊細で官能的な世界を表現している。

ベージュといっても決して機能性や実用性重視ではなく、化粧のようにパウダーをひと刷け肌に乗せるような感覚で、肌にふんわり一体化するおしゃれなランジェリーを身に着けられたら、幸せだろう。