武田 尚子
サフィア・ミニー著『リジェネラティブ・ファッション』
「サステナブル」「SDGs」「エシカル」と、言葉はかなり浸透しているが、実際のところ、深刻さを増す地球環境問題にこれからのファッションビジネスはどう向き合っていけばいいのか――。
フェアトレードのパイオニアであるサフィア・ミニー氏(ピープルツリー創設者)の最新刊、『リジェネラティブ・ファッション 人と環境に優しい服作り』(TWO VIRGINS刊)は、まさにそのガイドとマニフェストとなっている。
「サステナブル」(継続的な)に対し、「リジェネラティブ(Regenerative)」とは「再生」の意味で、より根本的な改革をあらわし、ファッションを新たなやり方で展開していくための体系的な転換を示唆している。
美しい写真を多用しながら、実に理論的で内容が濃く、重い問題を提唱した本である。
本書の章立てと各テーマは、「自然と原材料」(自然界に負荷をかける汚染物質の削減)、「人々と暮らしと手工芸」(暮らし、技術、コミュニティの再生化をはかり、すべての人々が貧困から脱出できるようにする)、「ニューエコノミーとリーダーシップ」(自然に配慮した衣料品の価格設定や、より少ないモノと暮らす満足感を広めるビジネスモデルの再設計)。
それぞれに、エコビジネスの先端で活躍する世界各地のブランドや企業、組織への取材やインタビュー、そして活動家たちのコラムが満載されている。サフィア・ミニー氏ならではのキャリアとネットワークの賜物といっていい。
とにかく事例が豊富で、クロエ、エコアルフ、パタゴニアなど、日本における人気ブランドも登場するが、知らないブランドも多く、いかに自分が無知であるかを思い知らされた。
私がサフィアさんに取材で会ったのは、「ピープルツリー」の自由が丘店がオープンして少し経った頃だったから(2000年前後か)、もう20年以上前。当時は「エコロジー」に対する社会的気運もまだ漠然としたものだったと思う。
地球環境問題に対する熱い思いはもちろんのこと、従来の運動家と違って排他的なところがなく、生活を楽しく豊かにする「ファッション」に肯定的だったのが印象に残っている。
一貫して、地球環境問題に取り組んでいる彼女の姿勢と行動力には感服させられる。