武田 尚子

2025 09 Mar

欧市場における米ブランドの躍進

アメリカとヨーロッパの対立と分断、ひいてはその後の世界情勢が危惧される昨今だが、世界のランジェリー業界ではヨーロッパにおけるアメリカブランドの躍進が近年、話題になっている。
その中心的存在が、キム・カーダシアン率いる「SKIMS(スキムス)」。2019年のスタート当初は「KIMONO」というブランド名が物議をかもしたが、改名後はEC中心に順調な拡大を続け、コロナ禍の2021年10月にギャラリー・ラファイエットでの独占販売というかたちでフランス市場上陸を果たし、今はヨーロッパ市場全体に拡大中。昨年はブランド全体の売り上げ評価額40億ドルといわれるほどの成長を見せている(下の写真はボンマルシェの新しい売場)。

パリのギャラリー・ラファイエット(オスマン店)では、同店ランジェリー売場の中で、モードのリーダー的存在である「LIVY」(エタムグループ)と隣り合わせで展開されているが、「SKIMS」は数あるブランドの中でも売上トップを続けている。女性の体の多様性に対応した幅広いスキンカラー展開とサイズ展開を軸にした、体型補整機能のある合理的なアイテムは、いかにもアメリカのスタンダードという印象。今までランジェリー売場に来なかった新しい顧客を取り入れ、ラウンジウエアなどへカテゴリーも広げている。

この動きをパリの老舗百貨店であるボンマルシェがだまって見ているはずはない。なんと、昨年、撤退したイタリアのプレステージブランド「ラペルラ」の売場後に、この「SKIMS」を導入したのである。
ボンマルシェといえば、ファッション通はもちろんのこと、おしゃれなインテリ層の地元客にも愛されている店で、「エレス」や「ハンロ」が売り上げ上位を誇っているが、「ラペルラ」に代わるブランドの選択にはかなり悩んだに違いない。この決断が永続的なものかどうかは分からないが、いずれにしても、「ラペルラ」から「SKIMS」というところに時代の大きな変化を感じるのである。

3月になると、春らしいピンクのディスプレイも(撮影:磯部美保)

これを受けて、競合ギャラリー・ラファイエットでは、アメリカの歌姫、RIHANA(リアーナ)の「SAVAGE X FENTY(サヴェージ・エックス・フェンティ)」を新たに導入することによって迎え撃っている。
インショップ展開が定着している「SKIMS」に対し、2月後半の導入時点では、目立つディスプレイもない地味なコーナー展開ではあるが、「SKIMS」とは違うセクシーな持ち味で、幅広いカラーやデザインが構成されている(撮影:磯部美保)。

 


このような動きに対し、百貨店のランジェリー売場の常連である既存の主力ブランドはどのような動きを見せているのか。それについては、昨年に引き続き今回も私のセミナーでお話しさせていただいたが、ブランドそれぞれに、きめ細かなMDで対応を図りながらも、むしろ本来のヨーロッパらしさを強化する方に揺り戻しが見られるのだ。
ランジェリーの歴史を考えても、昔からヨーロッパ的なものとアメリカ的なものが複雑に絡み合っているが、その中でこれから日本はどのような立ち位置で変化していくのだろうか。ヨーロッパとアメリカの攻防については、これからも目が離せない。


 

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