武田 尚子
インナーアパレル大手の変革
今年、新型コロナウイルスの拡大は私たちの生活に大きな変化をもたらしたが、アパレル産業にとっては試練の年だったといえる。
ワコールは2021春夏シーズンについても恒例の合同展と記者懇談会を開かず、プレス向けの商品説明会を昨日、オフラインとオンラインの同時で行った。
今回の商品戦略の前提にあるのが、一足早く京都本社で実施された記者懇談会で発表された経営戦略である。同社がコロナ以前から着手しているオムニチャネル戦略の推進の中で、従来の販売チャネル別戦略を見直してブランドを整理し(ブランド数も3割減目指す)、市場ニーズや生活者視点の変化に対応したブランド戦略が打ち出された。
その第一段階として打ち出されていたのは、「ウイング」ブランドと、「サイズオーダー」ブランド(旧「デューブルベ」)のリニューアルだ。ロゴデザインも刷新している。
2021春夏シーズンMDのポイントとしては、次の4点があげられている。
① 新しい価値の創造による市場拡大(ボディケア領域「MORE BODY CARE」の拡大)
② 基幹ブランド拡大策の推進(「サルート」の拡大、サイズオーダーブランドのリブランド)
③ 基幹ブランド以外の主なブランドの取り組み(「GOCOCi(ゴコチ)」、ニットインナー)
④ お客様一人一人とつながるマーケティング施策の推進(オムニチャネル基盤の活用、自社ECサイトの拡大を軸としたお客様との関係づくり)
全体を通して、今回、際立っていたといえるのは、価格面での変革を行っていたこと。
例えば「GOCOCi(ゴコチ)」(3500円~4600円中心)で3000円のハーフトップ、リブランドする「ウイング」で3000円台のブラを強化するという具合だ。同ベターゾーン「レシアージュ」(5000円台中心)でさえ、4000円台のブラを展開して新顧客の獲得を狙っている。
国産プレステージブランドが3ブランドとも、この2021春夏シーズンで終了(再編して同秋冬に再出発)という発表も、同社が現実路線に思い切った舵を切っていることがうかがえる。
大きな課題となっているのが自社ECサイト拡大策(2025年3月期でオンラインの構成比を直営で40%、他社含めて25%というイメージ)。その中でWEBならではのサイズにフォーカスした商品に力を入れている。「小さく見せるブラ」(D70)(左)と「Aカップさんのためのブラ」(AA70-A70)(右)を同じデザインで