武田 尚子

2021 28 Jul

ワコール新ブランドに込められたもの

ワコールが従来のブランド編成を見直し、思い切ったブランド戦略を打ち出している。
加速する時代の変化に対応し、デジタライゼーション&パーソナライゼーション(顧客との「深く、広く、長い」関係性)、顧客起点のバリューチェーン改革(チャネル別からエリア別へ)、新たなブランド戦略の実行(9つの基幹ブランドに集約)が柱となる。総ブランド数でいうと、3割減の37ブランドというところまで集約させている。

国内ブランドの頂点に位置づけられるものとして登場したのが、新ブランド「Yue(ユエ)」だ。
これは同社で歴史を刻んできた「トレフル」「スタディオファイブ」「ワコールディア」の、プレステージ3ブランドの撤退に代わるものとして発売されたもの。デザイン・パターンから、国内工場での縫製技術まで、それらの長年にわたる物作りを通して蓄積されたものが集結している。
ブランド名「Yue(ユエ)」は、物事の理由を表す「由縁(ゆえん)」から着想したもので、素材・技法・サービスすべてにおいて、お客様が納得する「理由」があるという意味が込められているという。

従来のプレステージ3ブランドの顧客層を満足させるという使命が前提にあるため、見たこともないような斬新さや先進性、デザイナーの個性というよりは、とくに「ワコールディア」や「トレフル」で培ったものが随所にちりばめられ、洗練と上質を追求しつつ、てがたくまとめたという印象だ。「スタディオファイブ」で人気だったブラジャー、「キュキュート」のパターンもそのまま使われている。
価格帯は、ブラジャーで11,000円から33,000円。
展開店舗は、8月にオープンする伊勢丹新宿店をはじめ、全国で92店舗。
売上目標は、3年半後の25年3月期で50億円を掲げ、うちEC比率30%をめざしている。

現在開催されているオリンピックの例でもわかるように、一般の人々が目に出来るのは結果であるが、すべての物事にはプロセスというものがあるわけで、ここに至るまでには紆余曲折があったに違いないと察する。
「新しい時代の日常を“豊かさ”で満たす」というキャッチフレーズのように、同ブランドの「豊かさ」が時代にどう受け入れられるのか、今後に注目したい。