武田 尚子
メリノウールという新しい風
今月上旬、「ゴールドウイン2023秋冬総合展示会」(東京ファッションタウンビルTFTホール)に行ってきた。
ゴールドウインといえば、近年は「ザ・ノース・フェイス」の快進撃が印象的だが、その他もモノづくりの伝統を背景に、長年にわたって多様なブランドを展開しており、時代に対応した動きを見せるスポーツアパレルメーカーとして目が離せない。
インナーウエアやスポーツブラをラインナップしているブランドも少なくなく、特に高品質なニュージーランド産メリノウールの利点を活かしたアウトドア&ライフスタイルブランド「icebreaker(アイスブレーカー)」は、インナーウエア市場という観点からしても新しい風と感じた。同ブランドの導入を始めたのは既に10年近く前になるが、最近はより日常を意識した商品展開となっている。
同ブランドの2023秋冬テーマは、”素肌にウール“。素肌に直接着けてこそ、素材の良さが実感できるというわけだ。
レディス、メンズそれぞれに、インナーからアウターまで幅広いアイテム展開を行っているが、中でも一番の成長性が期待されているのが、レディスのインナーウエアだという。
メリノウールは湿度管理や温度調節、さらに細菌の増殖を抑えて臭いが発生しにくいという特長もあって、登山やアウトドアには最適で、実際に購買者の6割近い人が日常的に山登りをしている人だというデータが出ている。
前シーズンから発売しているブラ付きキャミソールが好評なのに加え、今シーズンからはカラーも従来の4色から7色に充実。アウトドアスポーツに限定しないライフスタイルブランドへと、さらに進化させていく姿勢を見せている。
かつてニュージーランドに旅行した時に、このブランドを知った私は、年間通して重宝する素材であることを実感している。環境倫理や動物愛護のもとに生産される素材開発のストーリーを聞くと、言葉だけのサスティナビリティではなく、ますます自然との一体感や衣服の根源的なものを感じないわけにはいかない。
登山に限らず、日常こそがある意味でサバイバルのこの時代。シンプルでミニマルなライフスタイルが要求される中で、非常にポテンシャルの高いブランドといえるのではないだろうか。
*写真提供 :㈱ゴールドウィン アイスブレーカーグループMD 仲田政樹氏