繊維ニュース 編集部ブログ

2019 20 Aug

「明治元年にやった」

 【中国・四国支社】NHKの「歴史秘話ヒストリア」が面白い。先日は、“最後の大名”林忠崇公を取り上げていた。

 幕末の激動の時代に生まれ、明治・大正・昭和を駆け抜けた。現代のわれわれは令和になって「新時代が来た」と騒いでいるが、この時代の方が変化は大きかったであろう。誠の武士の心が生きていた頃であり、印象的なのは忠崇公の辞世の句。「真心のあるかなきかはほふり出す腹の血潮の色にこそ知れ」。明治元(1868年、戊辰戦争の降伏に際していた21歳の時に詠んだ。祖先の代から忠義を尽くしていた徳川家が新政府から存続決定を受け、これ以上の戦闘継続は徳川家や家臣に悪影響を及ぼすと考え、苦渋の決断を選んだ。

 時は流れて太平洋戦争開戦の年、昭和16(1941)年に93歳になった忠崇公は次女が経営するアパートの一室で臨終に際した。辞世の句を問われると「明治元年にやった。今はない」と一言。激動の時代を存分に生き、後悔はないといったニュアンスが受け取れる。

 くしくも今年は令和初め、元年のつながり。たくましく生きた先人に倣って自分を高めたいと思うが、怠け癖が抜けない筆者は日々できることからやっていこう。(小)