繊維ニュース 編集部ブログ
2019
06
Aug
夏でも黒いスーツ売り場
【中部・北陸支社】衣料品が売れない。中でも紳士スーツが特に低調だとよく聞く。ピーク時には年間1200万着の販売規模を誇っていたものの、今やその半分近くまでに(推定)落ち込んでいる。売れないのではなく、買わない、着ないのだ。現状では夏を除いた3シーズン用のスーツが1着もしくは2着あれば十分と思っている人が多くなってしまったのかもしれない。
では何故、こうなってしまったのだろうか。よくさまざまな外部環境のせいだというが、実は業界が売れる仕掛け、仕組みづくりのリスクを恐れてイノベーションを怠った結果かもしれない。業態店舗では1980年代のロードサイドショップ、2000年前後の2プライスショップ以降、一部オーダーショップ(PO中心)が増えただけで新しい業態が生まれてない。トレンドでも80年代のソフトスーツブーム以来、大きな変化はない。売り場は一年中、黒い売り場だ。
振り返るとかつて夏のスーツ売り場は特にわくわくして楽しかった。コットンのコードレーン、リネンスーツ、モヘアのトロピカル、ウールのポーラなど天然繊維を主体に素材、色柄、織組織など多様なスーツが陳列されていた。それが今やポリエステルを中心とした黒っぽい色の機能スーツだらけ。
ここで厄介なのはその耐久性だ。カーテン業界が市場規模の縮小を余儀なくされたのは、90年以降ウールや綿・スフカーテンから合繊カーテンに切り替わり、買い替え需要が起きなくなったからだ。紳士スーツ業界もリスクに挑戦しないと同様の憂き目に遭う。もはやビジネスパーソンにとってスーツは必需品ではない。嗜好(しこう)品だ。業界の新たなイノベーターの誕生を期待したい。最後に浅学非才な筆者の毀誉褒貶(きよほうへん)にご容赦のほどを。(聡)