船橋 芳信

2020 29 Jun

アガパンサスの華

ミラノの街は、ほぼ日常に戻った。正常かというと、何かが違う。

何がかというと、これ迄の日常生活の細々した事に微妙な変化が、ある。

先日三ヶ月振りに理容院に髪を切りにいったら、先ず、予約が取りにくい。

一日に予約客が、決められていて、店内での,待ち受けは御法度だそうだ。

予約の時間に着くと、店員からビニール袋を渡され、バック、上着をビニール袋に詰め込む。

手を除菌スプレーで洗い、靴底を除菌される。それから店内に入る。

使い捨てのビニールが大量に出るだろうなと、櫛や鋏をビニールから取り出し、身体を覆ういつものエプロンは、

ビニールで代用されて身体を包んでいる。

 これらの費用は当然髪のカット代に加算されている。

日常の時間がこんな風に変化して行った。意識しなかった、衛生観念は、日常の行動に激しい揺さぶりをかけてくる。

パン屋への買い物も、店の外に、2メートルの間隔を置いて並び、店内に入っても店員との距離を取れるように、

床に境界線がテープで貼られている。皆マスクをしているから、知人と出逢っても、知り合いかどうか等認識は出来ない。

本当に不便ではあるが、日常の漠然とした感覚が、研ぎ澄まされた緊張感を否めない。

ふと車窓の外に眼を向けた。

広場の花壇にアガパンサスの花華が、爽やかな初夏の風に揺れていた。

ミラノはもうすぐ7月である。