船橋 芳信

2019 30 Jun

「リュート弾き」カラヴァッジョ

「リュウート弾き」「エジプトへの逃避行上の休憩」カラヴァッジオは音楽に関する画を多く書いている。

16世紀末ローマは、法王に依るローマ大改造にヨーロッパ中から建築家、画家達が集まっていた。
21歳のカラヴァッジョは、無一文でここローマへ辿り着く。絵描きの工房に潜り込み、
給料無しでの工房の仕事に就く。
色んな画を書きながら、「トランプ詐欺師」の画を、デルモンテ枢機卿に気にいられ,
マダマ宮殿に迎い入れられ、棲み始める。
そこは、若い音楽家、絵描き達が住み芸術家のたむろする場所だった。
若きカラヴァッジョは、宮殿に飾る画を多く書きながら、周りのアーティストの
肖像画などを描いています。
その中の1枚、「リュート弾き」、若い男性が指先で優雅に弦をつま弾いている。
机の上には楽譜が、開かれその前にはヴァイオリンと弦が置かれている。
リュートを弾こうとしている若い男は、妖艶な表情、口元を軽く明け、何かを
告げ始めようとしてるかのようである。まさに其の表情の雰囲気は、音楽に包まれている。
この若い男は胸に深く抱く愛の想いを、正に歌っている。
 「リュート弾き」じっくりと眺めていると時間の流れの中に継続するゆったりとした空間のゆるみが、
背景の薄暗いバックの色、其の右上に射し込む光、胸元、指先に当たる光、
紅色に赤く染まった顔、を包み込んでいる。
カラヴァッジョは、デルモンテ枢機卿の好みに在った音楽のシーンを描いていった。
絵画に於ける音楽の研究家Agostino Gino 氏は、机上に置かれた譜面から、
超だいな量の楽譜のなかから、此の曲の作曲家を調べ上げている。
それはJacob Arcadeltの声楽曲である。
其の歌は、「貴方は私が貴方を深く愛し、崇拝してる事を知っている。
この愛の為に、私が死ぬ事さえも恐れはしないと言う事をご存知ないでしょう!
余りにも深く愛するが故に私は死んでしまいそうです。」
17世紀のベッローニ著、カラヴァッジョ伝には、このリュート弾きは、薄いブラウスの女性と在る。
が、ジーノ氏は、多分、カストラート歌手、だったのではないかと、、、
 又、机上のヴァイオリンは、どうか一緒に合奏を!と誘っているのです。
それは深い性への導引でもあるのだそうだ。
1枚のリュート弾きの絵画に刻印された多くの要素は、400年前のカラバッジョの
感覚、想い、生きる呼吸にさえも届きそうで絵画が、多くを語り出して行く。