船橋 芳信

2019 13 Mar

オペラ ホヴァンチーナ

 昨夜は嬉しいオペラ観劇でした。ホバンシチナ、凄いオペラでした。
通奏低音、バス、バリトン、メッゾソプラノ、合唱、打楽器、ホーン、
オペラを構成する音の配音が、ドッシリとして聴き應へがありました。
イタリアオペラとは、音楽への動機が全く違いながら、引き込まれて行くのは、
ムソグルスキーの脚本、作曲、このオペラを構成する動機が、
人を魅して止まないものが含まれているからに違いないと考えました。
しかも未完のこのオペラを引続き書き足したのは、ストラビンスキー、ショスターコービッチ
と言う現代ロシア音楽に名を連ねる巨匠達である。
何がこの巨匠等を突き動かしたのだろうか?物語は1680年代のピョートル大帝の時代に起きた、
民衆蜂起事件である。其の民衆蜂起の事件は、その後起きるロシア革命を喚起しているのだろうか?
人類歴史始まって以来、ロシアは、思想、共産主義思想を国の根幹に置くと言う国家を作り上げた。
 きっとムソグルスキーはこのロシアと言う大地に生まれた人類史上類を見ない国家の誕生の蜂起を、
17世紀の民衆反乱事件とオーバーラップさせて、ロシアの国民歴史オペラを書き上げようとしたのだろうか?
そう考えると、オペラ製作の動機は、強い情熱と、その意志が突き進み、
昨夜のあの素晴らしい演奏へと繋がってゆく。
 創作動機の違いが、作品の本質の違いを浮かび上がらせ、結果、音楽の構成、各パート、
歌唱方法、表現に至るまで、おなじオペラのジャンルとは言え、現代性を持った、
かくも違うオペラの存在に、感動と共感を覚えた。
終演後、このオペラは祈りに近いものが秘められていたように感じたのは、
そんなロシアへの愛国心、郷土愛が強く音楽に刻まれていたからであろうか?
ゲルギーエフの指揮は、初めてでしたが、腕の振りは、柔らかく、繊細な音を良く制御して、
あれだけの長いオペラを、息を呑見込む音楽を表現するのは、感銘を受けました。
 ロマンチックで人間の感情表現に、特出したイタリアオペラから、
思想表現に重きを置くドイツオペラ、社会状況、ロシアの自然、愛国心に心を動かされる
ロシアオペラ、パリへの情熱を歌い上げるフランスオペラ、、
又、スカラ座通いが始まりそうだ。