船橋 芳信

2019 31 Aug

Ristorante Alfred Gran San Bernardo,Valli Alfred

Ristorante Alfred Gran San Bernardo,Valli Alfredは、1964年、レストラン、アルフレッドをオープンした。

スカラ座の一階正面向かって左端の一角に、Ristorante Biffi Scalaがあった。
 15年以上に渡って、スカラ座の名歌手、音楽家達に、舞台後のディナーを提供してきた名コック、アルフレッド氏は、
忽然とBiffi Scalaを去った。其の名歌手達の名前に、マリア・カラス、レナータ・テバルディ、ジュリエッタ・シミョナート、マリオ・デル・モナコ、                        ジャンアンドレア・ガヴァッツェーニ、、ジュセッペ・ディ・ステファノ、50年代を代表する音楽家達が、Biffi Scalaでの、Alfred氏の料理に舌鼓を打ったのである。                   ミラノの家庭料理をレストランメニューに創り上げた、イタリア一の名コック、Valli Alfredno氏は、自らのレストランを持ったのである。
 私がこのRistorante Alfred Gran San Bernardoを訪れたのは、鯨岡阿美子先生、古波蔵先生がミラノへいらした時に、ご一緒させていただいた1986年の事だった。                   リゾット・アッラ・ミラネーゼ、のサフランの香り、鶏ガラで採ったスープで煮込んだカンネローニの米の一粒一粒が立った、仕上げはオーブンで焼き上げたリゾットミラネーゼの香ばしさ、       バターでこんがり焼き上げたコトレッタ・ミラネーゼ、にはレモンが付いてこなかった。つい、ボーイにレモンをお願いすると、コトレッタ・ミラネーゼは、
バターで揚げているので、バターとレモンは相性が良くありませんと断られたのを思い出す。
 Ristorante Alfred Gran San Bernardoは、室内は、ベージュ色に統一されていた。エレガントで落ち着きがあって、
ミラノの上流階級のお客で店内は,上品な雰囲気が漂っていた。
 そんな、大人の雰囲気を持ったレストランを東京に創りたいと願った日本の女性がいた。
1986年に、2年間ミラノに遊学した彼女は、料理を勉強し、イタリアから東京に戻った。
そして、青山にレストランを開いた。
そして、33年が経た。
シェフは4代目のミラノの友人だ。
乃木坂の地下鉄を降り、青山霊園脇の坂を上がり、徒歩3分、右手に階段を上がると、静謐なレストランが待っている。
料理はとても美味しい、しっかりしたベースの味に、色々な食材のコンビネーション、香りとスパイスの共演、食材の食感といい、                                  食に於ける音楽の演奏会のような、味の競演、視覚的にも夏の清涼感があって、ここまでコンビネーションを考え尽くし、
料理の一皿に時間と情熱とコックの才覚に溢れ、まるでアルフレッドにいるような錯覚に陥った。メニュー、料理こそ違え、
客をもてなし、店内は行き届いた緊張感に、その雰囲気を背筋を伸ばして愉しむ。                                                       アルフレッドのあのお店とそこに集うお客の雰囲気だった。
青山のこのお店は、正にあのミラネーゼを魅了したアルフレッドを、料理こそ違え、                                                      あの女性の夢を実現させたのを心強く思った。
i