船橋 芳信

2020 30 Apr

コロナヴィールスとファッション

来月4日から、ブロックダウンの緩和政策が始まる。製造業、建設業の禁止が解かれ、作業が始まる。

この2ヶ月に及ぶブロックダウンは、人々に焦りと不安とコロナヴィールスへの脅威をもたらした反面、

交通ラッシュによる大気汚染、工場の閉鎖に依る二酸化炭素を、大幅に減らし、自然が蘇り街中には人が減り、

日常のストレスは、スモッグと共に消えてしまった。

 此れ迄の忙しい、一年間のスケジュールをこなしていた仕事への忠勤は、未知のヴィールスの出現で、敢え無く崩れ去って行った。

 2020年2021年秋冬コレクションは発表したが、フェアーは開催されず、売る時期は無くしてしまった。

アトリエは、2ヶ月、誰も働いてはいない。此れ迄、仕事の為にと言う理由で、動いていた時間が、コンテ首相のブロックダウンで、

自宅待機、その間、ストレッチ、読書、料理、音楽鑑賞、ピアノレッスン、尺八のレッスン、坐禅、やりたい事のやり放題である。

 日記も付ける。今日は何をしたのかを、考えるが、とりわけ何も無いのだから、感じた事が主体となって行く。

15年止まっていたピアノレッスンを始めた。上達する事は目標ではなくなった。楽譜に書かれた通りに弾く事、これに苦しんでいる。

楽譜を見ずに弾ける曲が、楽譜に忠実に弾こうとすると、指が止まる。耳を頼りに弾いていたんだと、理解できる。楽譜に忠実に弾く、

ここからが音楽の道が始まる事を感じる。楽典の勉強にも興味が出る。楽譜を読む為には、音楽の基礎知識を学ぶ必要がある。

そしてイタリア語の勉強を始めた。先ずは文法。イタリア語の文法を知らずして、話す我がイタリア語の貧しさは、楽譜を見ないで弾く手前勝手な誰も聴きたくないピアノとおなじだ。こうした見方の果てに、ホロビッツのピアノ、グールドのピアノ、ガヴァッツェーニの指揮、トスカニーニの指揮、

マリアカラスの声、タマーニョ、カルーソ、ティート・スキーパ、ラウリ・ヴォルピ、の声の芸術、絵画然り、彫刻然り、

様々な歴史の流れの中に燦然と輝く芸術の個性は、こうした時間の止まった中で育まれたであろう。

 コロナヴィールス後の世界は、こうした正論のもと、服作りの新たなる精神が蘇ってきて欲しい。

いや、今こそ、一針一針、生地と針と糸とのコミュニケーションとで、生き生きとしたファッションを目指して行きたい。