芹澤 絵美

2021 23 Oct

自分でワイン

 

ワイン用のブドウを育てる仕事に就いてから早6年。

ワイヘキ島には24箇所余りのワイナリーを併設しているヴィンヤード(ブドウ畑)があり、最初の4年間はワイナリーを持つヴィンヤードで働いていました。
ブドウの収穫期になると、ヴィンヤード・スタッフもワイン・メイキングを手伝います。
収穫した葡萄を機械でクラッシュしステンレスタンクにいれ、1日4回6時間おきに手作業で撹拌し温度と糖度を測ります。

昼間の仕事をこなしながらの深夜0:00と早朝6:00の当番はなかなかにハードでした。
ワイナリー内にこもる二酸化炭素濃度に注意しながら2人組でタンクを1つ1つ撹拌していきます。最初はブドウジュースだったものが、発酵してアルコールに変わっていく姿を見るのは何度経験してもワクワクします。


いま私が働いている会社はヴィンヤード管理専門の会社なのでワイナリーでのお手伝いはありません。なので少し残念に思っていたのですが、去年の11月にチームに加わったスーパーバイザー、イタリア人のマテオ君が、収穫前のチェック用に摘み取ったブドウでなんとワインを作っていました!
 

ブドウの収穫期になると、畑ごと品種ごとにブドウのサンプルを摘み取り、糖度と酸の値を計ります。その結果を各ワインメーカーに報告し彼らとの話し合いで収穫日を決めていきます。
サンプルのブドウは通常破棄するのですが、マテオ君は自分の気に入ったブドウジュースを品種ごとにプラスチック容器に分けて発酵させワインを作っていました。

先日、ワイン造りの工程の1つであるラッキングを手伝いました。
瓶の底に溜まった澱を取り除く作業です。

別の容れ物にワインをいったん移し、元の瓶から澱を洗い流したらまたワインを戻します。
この時に、酸化防止剤を入れ雑菌の繁殖を防ぎます。
少し液面が下がるので、既製品のワインを継ぎ足し空気の隙間を取り除きます。


清潔を保つきちんとした設備や道具が無いとちゃんとしたワインは作れないと思っていたのですが、マテオ君の「It’s Easy」というゆる~い言葉そのものに、自由で柔らかい酸味を持つ彼のワインを飲んだ時に、あ~、未だにいろいろと思い込みで決めつけて生きているところがあるんだなぁと体の力が抜けていきました。タナーという品種でドミナントされたマテオ君の特製ブレンドワイン、今まで飲んだことのない味わいのあるワインで想像を超えた美味しさでした。


ニュージーランドではビールやワインを個人消費用に酒造するのに特に免許を必要としません。
私も庭にワイン用のブドウを3本植えているので、マテオ君にいろいろ教えてもらいながら来年はそれで自家製ワインを作ってみようと思います。
(*プロのワイナリーは床も壁もタンクも樽も清潔が行き届いた環境で作業しています)

ワイン用のブドウはワインになってこそ本望?
彼らのブドウ人生を来年からは活かしてあげられそうです。
我が家のブドウもバッズが開き新しいシュートが50cmほど伸びてきました。
美しい房がたわわに実る姿を想像して4月の収穫を楽しみにしています。