山中 健
2019秋冬東京FWレポート2 東京FWとエシカル
3月23日に閉幕した平成最後の東京のファッションウィーク。印象に残ったことについていくつか書いていきたいと思います。今回は、東京FWにおけるエシカルなテーマを投げかけた取り組みについて伝えます。
ミラノコレに飛び立って久しい「ウジョウ(Ujoh)」から。動物に負担をかけない素材として注目されている伊サルダリーニ社製(SALDARINI)の"カシミヤフレークス"を使用した、アウターのカプセル・コレクションをAmazon Fashionweekで発表。アニマルフレンドリーというエシカルテーマを投げかけました。
マーカウェアの石川俊介デザイナーが放った新ブランド「テキスト(Text)」も印象的でした。石川氏が長年取り組んできている「ファッションにおけるサステイナブル」を凝縮したブランドです。“ファッションとは農業だ"をスローガンに、石川デザイナーが生産地に足を運び、ビジネスマッチングをしてSCMを組み立てたブランドです。オーガニックコットンやウールなど環境に優しい素材、埋もれてしまった生産技術の再生など、そのアイテムにも石川氏なりのこだわりを感じます。
同ブランドは、エシカルを全面に押しだけのブランドではなく、ファッションとしての魅力も満載。レトロ、英国調、ジェンダーフリーというトレンドを押さえながら、力まずに着こなせる大人のワードローブに相応しいものでした。
中でも印象的だったのは、カシミヤファーです。リアルファーが動物愛護の考えから使用を敬遠するブランドが増えているのはご存知かと思いますが、エコファーと言われるフェイクファーについても環境問題があると指摘されています。それは、製造業者によっては生産過程において環境に負担があったり、土に戻らないため廃棄段階で環境への影響があったりするというものです。この問題に対する石川氏の提案としてカシミヤファーがあるのでしょう。
しかし、カシミヤと言えば、近年環境問題として取り上げられます。その人気と安価販売により、カシミヤ放牧が過剰に増加にし、草原の砂漠化を招いていることが問題としてあげられているのです。この問題からエシカルファッションのビッグネーム、ステラ・マッカートニーは、ヴァージン・カシミヤを取り扱わないことを表現しています。このあたりを、石川氏に尋ねると、カシミヤによる環境破壊は、フェアトレードに基づかず安価に仕入れようとすることが問題だと言います。現地の放牧民たちは、生活を支えるためにカシミヤを育て、素材提供をしている。そこにフェアトレードをすることで、過剰な放牧を抑えられるということです。
一つ一つの取り組みについて、饒舌に語る石川氏。自らの信念に基づいて現地に足を運んだことがわかる説明でした。
Amazon Fashionweekに話しを戻すと、アダストリアグループの「HARE(ハレ)」も東北で大量に残っている着物をアップサイクルするという取り組みをしています。
動物愛護、環境保護、3R(Reduce、Reuse、Recycle)、技術継承などエシカル(倫理的な)ファッションには多様なテーマがあります。場合によっては、それぞれのテーマが相反することもありますし、そもそもトレンドを作ってファッションを売ること自体がエシカルじゃないという考えもあります。
しかし、さまざまな視点でファッションやファッションビジネスを見つめ、考えてもらうということもファッションウィークの存在意義であるならば、今後も今回のようなエシカルな提案が増えることを願いたいですね。
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