コレクション取材やショップリサーチの時に、目につくのが世界にある日本の力。「クールジャパン」という言葉が使われ始めたのもひと昔前。寿司、ラーメンを始めとする日本の食、アニメ、キャラクターなどのサブカルは、世界各国で見られるようになりました。そして、今、日本のソフトパワーはさらに広がり、それらを伝える業態も進化しています。今回は、異業種から学ぶということで、非ファッションの事例を3つ紹介しましょう。

 

COMO DEMPSEY

 

 

COMO DEMPSEYは、旧基地にある複合施設。シンガポールのブランド王「CLUB 21」が手がけています。なだらか丘陵地帯にある様は、カリフォルニアの郊外にいるような気にもなります。

ここがなぜ日本のソフトパワーかというと、まずギャルソンが手がける「ドーバーストリートマーケット」が核にあるということ。そしてレストランゾーンにあるデリゾーンでは、日本の有機食品を販売しているということです。

有機の醤油や味噌などを輸入販売しています。シンガポールでは、オーガニックはまだまだ一部のもの。流通を見る限り、在シンガポールの欧米系住民のためのものと感じます。その中で、日本の有機の調味料を販売していることは驚きでした。日本の駐在家族が買うのかとも思いましたが、ロケーションから察するにそれはあまりないでしょう。「CLUB 21」が提案する新たなライフスタイルを成す一つの要素として取り入れているのではないでしょうか。

 

プリッツカフェ

パリにあるガレット専門のレストランです。ブルターニュ発祥の同店がなぜ、日本のソフトパワーかというと、この店は日本で広く展開した後、パリに出店して人気店となりました。行ってみれば日本で第二創業した店。その後、パリに逆輸入したのだと思います。日本の同店に入ると、「本場フランス」のようなムードを感じるかと思いますが、パリの店を入ると、東京らしいコンテンポラリーでクールな店だと感じます。欧州発の素材を日本流にモダンにした日欧融合のモデルとも言えそうです。

 

 

北欧のセブンイレブン

 

世界中のセブンイレブンを見ると、その国のライフスタイル、そして現地のオペレーションレベルを見ることができます。私の海外視察の時の一つの楽しみです。

ご存知の通り、セブンイレブンは米国生まれですが、現在は日本のセブン＆アイホールディングスの傘下にあります。そしてグローバル展開は、日本のセブン＆アイホールディングスのグループ会社が直接運営するエリア（中国の北京、成都など）とライセンス付与する国・エリア（香港、東南アジアなど）に分かれます。このライセンス付与して現地企業が運営しているエリアは、日本のセブンイレブンとは比べものにならないほど、脆弱なMDパッケージやオペレーションとなっていることがままあるのも事実です。

そして今回取り上げる北欧のセブンイレブンはノルウェーのReitan Gruppenにライセンスを付与しています。

そしてこの北欧のセブンイレブンがとても魅力的。私が見たコペンハーゲンのセブンイレブンは、日本のセブンイレブンをさらにアップスケールしたようなモデルとなっています。

内外価格差や北欧の物価高により高級に見えているのかもしれませんが、セブンイレブンは陳列している商材や展示レベルはやはり高いように思います。そして、レジ横には「おでん」ではなく「デンマークホットドック」でした。

米国で生まれた、日本でアップスケールしたセブンイレブン、この北欧のセブンイレブンがアメリカのパッケージを現地の努力で磨けあげたのか、それとも日本のパッケージをベースに磨けあげたのかわかりませんが。見る限り後者のように思えた次第です。

 

 

他にも、欧州の洒落たレストランが、日本の懐石のようなスタイルでサーブしていたり、カフェで抹茶をたてていたり、欧米のアッパー業態では日本を感じることが多いのです。

これらの事例を見て感じるのは、日本のソフトパワーに魅了を感じる国は多い。しかし、国際基準まで引き上げないと先進国及び新興国大都市では通用しないということです。価格を上げなければいけないならその価値を、コストリーダーとなり得るなら世界のボリュームプライスに適合することが必要でしょう。そんなことを感じた一年でした。

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