山中 健
2019NYレポート1 小売リーダーの様変わり
先月末、ニューヨークを久しぶりにショップリサーチしました。どの都市でもファッションウィークと兼ねてショップリサーチをしているのですが、今回はNYメンズのスケジュールが軽かったこともあり、リサーチをしっかりとすることができました。
今回、一番感じたのは「小売のリーダーが様変わりした」ということです。店頭が賑わっているプレイヤーが変わっています。ファッションでいうと、百貨店、スペシャリティストア、テーマ型ストア、SPA、ファストファッションと市場の主役であるプレイヤーが変わってきましたが、今はデジタルネイティブ(創業時からデジタルでビジネスをしている)なプレイヤーが人気を集めています。
3年ぐらい前までは「デジタルネイティブ=新興」というイメージですが、今やデジタルネイティブでないプレイヤーで賑わっている小売を探すのに苦労するほどです。ボノボス、ワービー・パーカーはもはや老舗感が漂っています。
その中でも賑わっているのは、「エバーレーン(Everlane)」と「グロシエ(Glossier)」でしょう。「エバーレーン」は、「ガラス張りの価格政策で注目を集める新興ファッションブランド」というイメージから脱却。中グレードの人気ブランドに成長しています。メンズはイマイチですが、ウィメンズは単品説得力があり、このグレードの主役であったJ.Crewの各業態が色褪せて見えます。世界観やテイストという名のもとミッドグレードのファッション企業が高粗利を稼ぐというのが難しくなっていることを感じます。
今やデジタル、オンラインの広がりにより、まずはデバイスで商品をチェックする時代。そうすると一つ一つの商品が自分にとってメリットがあるかどうかが大事です。店舗しかなかった時代に行っていた、インストアプロモーションやデコレーションだけでは消費を喚起することが難しくなっていることを痛感。世界観に浸るとしたら、オンラインやSNSでしょう。そこで経験したUX(ユーザーエクスペリエンス)を拡張した店が人気を集めているのでしょう。
テイストや世界観で商品価値を上げて売上につなげるという手法は、洋服以外の方が上手くいっているようです。グローシエの実店舗はその代表でしょう。「グロシエ」の世界観で作り上げた空間で、嬉々とした表情でコスメを選ぶ女性たちの姿を見ると時代の移り変わりを感じざるを得ません。そこは店ではなく、まさにコミュニティのために提供されたラウンジ。スタッフと顧客も「売り手」と「買い手」でなく、まさに仲間。かつての109系のブランドのように、友達感覚の販売員のレベルではなく、本当に売ることを目的にしない友達です。
元々、販売スタッフと顧客が友人感覚で結びついていた米国流販売スタイルの進化系とも言えますが、このコミュニティーづくりというマーケティーング手法は、日本のファッション小売業にとっても参考になるでしょう。
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