山中 健

2020 16 May

「レナウン民事再生」に思うこと

海外企業での大手の破綻に続き、かつてのアパレル大手「レナウン」が民事再生となりました。かつては日本一のアパレル企業だった「レナウン」。私は、その輝きを知っている最後の世代かもしれません。

 

「レナウン」を私が知ったのは子供の頃のCM。確か日曜映画劇場のスポンサーで、型破りでファッショナブルなCMを新鮮な気持ちで見ていたことを思い出します。

 

そして、私が就活をする頃、アパレルを目指す学生にとっては「ワールド」「オンワード」と並んで憧れの存在。「ダーバン」「レナウンルック」「レリアン」もグループに擁し、「ビギ」や「ニコル」と比べ、「きちんとした」企業というイメージが強く、神宮前に大きなオフィスを構えていることも「しっかりとした」企業であり、生涯一企業の時代にアパレルを目指す学生にとって輝かしい存在でした。

 

しかし、平成に入った頃から具合が悪くなり、傘下に入れた「アクアスキュータム」の売上鈍化、「オンワード」の「組曲」「23区」、「ワールド」の「アンタイトル」に並びべく開発された「エンスィート」の伸び悩み、神宮前ビルや「レリアン」の売却、中国の山東如意のトップに叱責されるテレビ報道…。その華々しく展開した「J.クルー」の撤退、後は同社に関するニュースは悲しいものばかり。統合した「ダーバン」や一時リバイバルした「アーノルドパーマー」、SC業態の「マーノ」、サブスク「着るだけ」などに期待しましたが、全体を好転させるほどにはなりませんでした。

 

国内チャネル萎縮、海外での不振などの販売が上手くいかなったこと、何より親会社の山東如意の体力低下が大きな要因なのでしょう。やはりこのコロナ禍は、体力のなくなった伝統的企業の寿命を一気に縮めます。伝統的企業は自己資本比率が高いところでないと耐えきれず、ポストコロナの潮流の頭を捉えた新興企業にとっていくのでしょう。

 

再生の際、スポンサーが魅力的に感じるのはその企業のブランド力、チャネル、顧客、技術。「レナウン」の強みはチャネルと顧客。ただそのチャネルも萎縮し、保有するブランドの多くは顧客が相当高齢化しているので、その道は厳しいかもしれません。同社には、これまで一緒に仕事をした方々もいるので心が痛むばかりです。

 

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