内田 文雄
中国キャッシュレス化の実態とは!
日本でも様々なメディアで報道されている様に、中国は世界一のキャッシュレス先進国だと思います。
ご存知の通り、キャッシュレスとは?現金、クレジットカード、電子マネー以外の手法による決済を指します。そしていま中国で爆発的急成長を遂げているのは、スマートフォン(以下スマホ)を使ったモバイル決済なのです。
ここで日本と中国の状況を説明したほうが分かり易いかもしれません。日本ではパソコン向けの様々なサービスがありますが、中国では全てがスマホに集中しています。理由としてよく言われるのが、中国は先進国ほどパソコン普及が進まず、そのパソコンを用いたインターネットの時代を跳び越えて、スマホとモバイルインターネットの時代が来てしまったわけです。
そして2012年頃から、中国では爆発的にスマホが普及しだしました。モバイルインターネットユーザーは2017年6月時点で、7億2500万人にも達しています。この内モバイル決済(携帯電話端末を用いた決済)利用者数は5億185万人。13億7900万人の国民の38%が使っている計算になります。これは2014年あたりから、オフラインでの利用、つまり店舗での決済が始まったことも大きいと思います。いまや大都市では現金を使わずに生活出来るレベルまで普及しています。私自身も銀行に行く機会が極端に減り、クレジットカードも全く使いません。もっと言うと財布を持たずに出かけることもしばしばです。
私の日常生活でのスマホ(モバイル)決済具体例...
・レストラン、スーパーでの支払い(含む露天での買物も)
・服飾雑貨代金支払い
・ホテル代金支払い
・水道光熱、携帯通信代金の支払い
・タクシー、新幹線、飛行機代金の支払い
・地下鉄代金の支払い(上海では1月20日からスマホをかざせば乗車できます)
・病院診察代金の支払い
・シェアサイクル代金の支払い
等々、書き出せばキリがなく生活における全てが携帯で自分のQRコードを読み取ってもらうか?店のQRコードを私が読み取り金額を打ち込んで承認すれば支払いが済んでしまいます。日本の方は驚かれるかもしれませんが、最近は「現金お断り」の店も増えてきています。
1月20日より上海地下鉄ではスマホをかざして地下鉄に乗ることができるようになりました。
これまでは別に交通カードを持つ必要がありました。外国人は今年の年末までには使用可になるようです。
上海の郊外、万象城1階にテンセントがOPENさせた無人店舗、スマホで入口のWechat QRコードを
読み取り入店、買物も最後に無人レジでスマホ決済
でもやはり知りたいのは、何故にここまでモバイルインターネット、モバイル決済が爆発的に普及したのか?中国のスマホ決済は大きく2系統があり、電子商取引大手のアリババ系の「支付宝(アリペイ)」と、IT大手の騰訊(テンセント)系の「微信支付(WechatPay)」、それぞれ専用アプリを用いて決済を行います。
ではこれら運営会社にとっては莫大なマーケティング費用を投じた価値は何なのか?その答えは言わずもがなですが「ビッグデータ」にあるわけです。聞き飽きた感のあるビッグデータですが、中国IT業界ではスマホを通じて収集された大量のデータによって次々と革新的サービスが生み出されています。
アリババの馬雲(ジャック・マー)会長はある取材で「何億人のも消費行動を収集し、ビッグデータをAI(人工知能)を使って分析していくことで、"見えざる手"が支配し、最良とされてきた『市場経済』を超える新たな『計画経済』を目指す」と野望を語っています。買い手と売り手による"見えざる手"で市場が自然と作られる時代から、ビッグデータを元に"見える手"で市場を作り上げる考え。
最後に。
中国でスマホ決済を行うためには、中国国内の銀行に個人口座を持ち、中国で身分証やパスポートを使った実名登録のスマホを使っていることが条件になります。
ただ以下のような不安もつきまといます。いずれの決済も専用アプリで管理されるため、消費者の身分、収入、資産状況、自宅や職場の場所、家族構成、食べ物や消費財の嗜好(いつ、なにを、どれだけ購入したか)等の個人情報が、便利さと引き換えに事業者側に渡ることを承諾しなければならないのです。
それでは!