内田 文雄

2018 02 Feb

何故中国で真のVMDが育たないのか?

私の生業は日本やアジアではVMD、欧米ではVMと呼ばれています。

過去のこのブログでも何回か書かせてもらっていますが、私が住む中国ではまだまだ「VMD=ディスプレイ」という事と勘違いしている人の実に多いコト多いコト。

 

上海には東京の文化服装学院等と提携している服飾の大学や専門学校(大専)が幾つかあり、それらにはVMD科もあります、それら大学、大専から講師の依頼を何度も受けていますが、今はお断りしています。誤解を恐れずに言うと時間がないコトが理由なのですが、実は最大の要因は大専の教授たちから私に求められるのは、例えばカラーの並べ方、ディスプレーの構成(いわゆる三角構成...等)、目立つショーウィンドウとは?世界で流行っているウィンドウ事例、流行りのインテリア、店は?...というような、重要ではあるけれど、私が考えるVMDとは相当かけ離れているコトによります。

 

私が考えるVMDとは?これまでも何度も書いていますが、簡単に言うと「商品企画の精度を上げて→商品に適合した売り方を考え→VMD理論を用いて売場を編集し、売上を上げるコト」なんです。

大専 VMD科の授業風景(実践編)

 

 

大学、大専の教授達は、上述の私の考え方を話すと「それは学校を卒業して、彼らが就職するであろうアパレルやリテイル企業で経験しながら学べばよくて、学生達には如何にお客さんをアッと驚かせるウィンドウや、カラー別の綺麗なレイアウト、フェイシングを分かり易く教えて欲しい...とにかく派手に、綺麗に...」の一点張りで話が全くの平行線なのです。中国ではVMDという職種名ではなく今でも「陳列師」と呼ばれています。要は陳列(ウィンドウディスプレイ、商品フェイシング)を専門に行う人という認識なのです。

 

もちろん、教授達が言う基礎は間違いなく非常に重要で、その基礎をカリキュラムには当然ながら入れるのですが、私はそればかりを教えても私は学生達のゴール(何が出来る人に育成するのか?)が違うと考えているわけです。私のゴールは?何故VMDという職種が存在し、アパレルやリテイルから必要とされているか?端的に言うと「マーケットを理解し売上を上げるコトができる人材を育成する」なのです。

学生達に2-3年の時間で習得するために、アパレル、リテイル事例を多く討論させるといったカリキュラムを組み、卒業後には希望する企業に入り即戦力となって活躍して欲しいと考えているのです。

 

事実として、弊社は今数社のアパレルやリテイル企業をクライアントに持ち、各社に入り込んで商品企画、MK(ブランドPR、販促、EC)、VMD、内装設計、店舗運営面...の指導をさせて頂いているのですが、例えばVMDチームのマネージャークラスは当たり前、大学、大専新卒や企業が主催するVMD専門塾などで、VMDを学んできた2-3年目の子達全てが「如何に綺麗に」とか、「如何に目立つためには?」みたいなコトばかり考え、商品企画や、MK、営業チームと一切横連携をしないのが一般的になっている現状なのです。

 

究極を言うと「VMDチーム/人に売上責任が無い」というコトも問題で、何かふゎ〜っとしたカッコ良い仕事の様に捉えられています。学校側も企業も陳列師ではなく真のVMDを教育、育成しようという土壌も、考え方も存在していないのです。企業内でも上司が部下にVMDをロジカルに、理論立てて教えるコトができる人は本当に稀です。

 

もちろん、そういう現状だから弊社が指導する場面、活躍するフィールドが有るのは事実なのですが、今の大学、大専等でVMDを学んできた人や、企業に入りVMDが好きで独学で学んできた人等の思考も一歩一歩変えながら、今後は大学か大専で「これからの時代に不可欠なVMD優秀人材を育成する!」ということも、相当時間は掛かるとは思いますが取り組んでいきたいと考えています。このあたりで一石を投じないと中国のVMDは変わら無いし、私が中国に根ずいてVMDを指導している意味も無いのかな...と。

 

それでは!