内田 文雄

2017 25 Dec

私が中国で起業することになったキッカケ 10!(楽しかったジルサンダーさんとのお仕事編)

2007年世界中のアパレル業界関係者に驚きと数々の波紋を呼んだ「ユニクロとジルサンダーさんとのコラボレーション」。当時私はユニクロの国内外グローバル全体のVMD部門の責任者を担っていました。

 

と言うことで、社内に「+Jプロジェクト」が組織され、否応なしに私が「+J」というコラボブランドのVMD全体の窓口をすることになりました。営業墓部門は「+J」をどの店舗で販売するか?MK部門は売り方、つまりVISUALや販促物はどのようなものにすべきか?そして私領域では、どのようなVMDでやるか?どのような什器デザイン、トルソー、ハンガーを開発するか?等など、商品開発以外の全てに関して、私も参画して意見を述べ具現化していったことを覚えています。

 

ジルサンダーさんは毎月1度の出張ベースで東京に来られていました。長い時は2週間、短い時で1週間しか東京のユニクロ本部に来られないため、その打合せの時間調整が大変でした。と言うのも、デザイナーなので、当然ながらデザイン、素材、パターンに拘りがあるため、それに充てる時間が必然的に長くなり、我々の打合せ時間通りに来られなかったり、極端に時間が短くなることが当たり前でした。

 

ただ、VMDの打合せに参加される彼女は、当然ながら真剣そのもので本質を突いた質問や確認をされて、私も戸惑う部分も多々ありましたが、その過程のなかで彼女は本当に服が好きで、その服が展開される環境(店舗)にも異常なほど関心が高く、さすがプロだと痛感したものです。

 

事例として、布張り半身トルソーを開発することになり、半身トルソーを製作されているマネキン会社さんから、布のサンプルを集め彼女に提案する際も、布の厚み、カラー、素材、シャリ感などに拘り、何回も提案しやっとOKをもらえました。服のデザイナーゆえに生地(布)に関しては妥協しない人でした。トルソーのボディサイズにも当然ながら相当の拘り、そしてトルソーのベース部分のついても同様でした。

 

その打合せの中で忘れられないことが有りました。「+J」の店舗展開までに時間が迫りつつあるなか、何体ものトルソーのサンプルを製作し、トルソー開発が暗礁に乗り上げている際に彼女が「ここまでやっても良いものができないなら、イタリアのB社のトルソーを輸入しましょう。何故ならあのトルソーはスタイルや、布張り含めて完成されているから、何も加工せずそのまま使えるし!」と言われたこと。

因みにB社とは業界関係者なら皆さんが知っている、超有名なマネキン、トルソー会社。但し1体あたり日本円で7-8万円もします。コストを最重要視するユニクロでトルソー1体にそんな経費は掛けれません。その事を彼女にじっくり説明し、「今よりももっと良いものを製作します。次回来日される際に確認下さい」と話し、その場は収まりましたが、それからが大変でした。

 

当時のトルソー開発には、富長さん(現在はStyle Blueというマネキンデザイン企画会社社長)に本当にお世話になりました。彼は私がマネキン界の師匠と慕う方、彼と一緒に中国のトルソー工場に飛び、日本の生地を持ち込み、製作を指示し納得いくまで改良し、最終的には彼女から「満足です、問題なし!」と言われるまでのトルソーを開発し、納得いただけた事は嬉しかったですね。

ユニクロニューヨークSOHO店の+J売場

 

こんな事をやっていく中で、今度は新たな課題も出てきました。これは正直辛かった...要は店舗で「+J」の売場にユニクロの定番である商品説明や、価格が書かれたPOPを設置するかどうか?

当然ながら彼女は「POP設置なんてありえない、せっかくの世界観が台無しになる!」の一点張り、営業系の方々は「いくら著名な方とのコラボでも、価格POPを設置しないのはユニクロではなくなるし、まず売上に影響する!」とこれまた道理のある見解。

この事を柳井さんに相談をしたら「売場の責任者である内田くんが、双方の意見を取りまとめて結論を出してください!」と言われ、それはそれは私の中でも困惑した一件でした。

最終結論は、「POPは付けるが、POPの数量を少なくし、POPもあまり目立たないシンプルなものにする」というものでした。この結論を聞くと何か曖昧な結論に感じるかもしれませんが、これが精一杯でした。結局彼女に折れてもらった形になりましたが。

 

という事で、何とか「+J」は予定通りに日本をはじめグローバルでデビューする事ができました。デビュー後は多くのジルサンダーファンや一般のお客さんに支持され、初日から売り切れが続出する現象が起こりました。

 

という「+Jプロジェクト」でした、彼女と一緒に仕事をさせてもらった数年は、苦しさ以上に楽しさの方が多く、服を中心においたクリエイティブ、そして物事にこだわるポイントなど、本当に勉強になりました。

 

次回は「ユニクロでのお仕事折り返し編」です。

 

それでは!