生地 雅之

2021 13 Sep

小売業ではマーケティング不在のリニューアルがまだ存在している

最近GMSのリニューアルを見ていると、マーケティング不在と感じる事が多いのです。
某大手GMSの衣料品売場のリニューアルで、たまプラーザ店、大和鶴間店の改装をみていると「お客様不在の頭でっかち」の改装が見られ、結果(利益向上)が出ないので、「トカゲの尻尾切り」の人事異動が頻繁に行われているのが実情なのです。出来る(どうありき、どうすべきかを判っている)人材を育成していないのですから、社内に出来る人等は存在していないので、誰に変えようが同じなのです。人材育成以外に道はなく、即効性が当面必要なら外部依存すべきですが、それも選ぶ側に何処に向かっているかのVISIONを前提に、即した人を選ぶ目線が必要なだけなのです。

百貨店にも一部見られるのですが、改装期間は長いので失敗すると新宿や梅田以外の地方・郊外店は10年以上放置されます。リニューアルを失敗しても再投資もできないので、失敗したその中での最善を尽くす以外には道はありません。勿論、それでも最善(売場構築のみではなく、商品MDも含め)を尽くせば前年実績以上は取れる可能性も秘めているのですが、これも上記GMS同様に、社内に出来る人材が不在なのです。育成もしないでそう都合の良い人が最初からいる筈もないのです。存在していたらその人は既に頭角を表し、その企業もそこまで低迷していないのです。

話を戻して、小売業のリニューアル失敗(結果=利益が出ていない)はマーケティング不在であり、既存顧客を無視して新規顧客獲得に目が行き、まず既に購入実績のある既存顧客を先に捨て、新規顧客のMDが取れていないという思い込みで、データを無視した声の大きい上層部の意見に負け、間違った改装が多いのが実情です。GMSだけではなく、百貨店でも存在しています。リニューアル失敗では、三越恵比寿店も含め多くが閉店の憂き目にあっているのですが、

TOPもTOPですが、ミドルもデータを軸にしたMDが組めなく、責任を取らない(取りたくない)ので上層部の言いなりになっているのが実態なのです。お客様を直視して、まずは既存のお客様を如何に現存のMDで今より少ない面積(品番数)で売上を確保するのか?その空いた場所で新規MDの挑戦をされるのならまだわかるのですが、MDの圧縮が出来なければ新規MDの挑戦などはやるべきではありません。特に小売業は先に面積ありきではなく、自店のお客様に支持される売場(暖簾)や商品MD(コトやモノ)が構築されてからなのです。利益効率を上げれば面積は結果、広がるのですから、

責任については、上記のような声の大きい上層部の決定なら、当然上層部が取るべきですが、任されたミドルも結果を出せない場合は責任があるのです。決定に納得できないミドルなら受ける前、あるいは受けた後即にやり方を上層部に提案し了承を得て、事前確認、途中報告、結果報告の3つを確実にクリアしておくことが前提です。その了解を取っておけば、その通りに実行していて結果が出ない場合は上層部の責任以外に何ものでもないのです。そこに釘をさせるミドルがいないのが残念なのですが、真剣に自社の事を考えて仕事をしているのでしょうか?嫌われる事を怖がって何も言えない・言わない状況に自ら陥っているのではないでしょうか?声の大きい上層部の存在を認めているTOPも大きな課題があるのですが、他者のせいにする前に自らは?

本来ならミドルが自分の考えでの事業立案で上層部を説得し、自分の考えでMDプランやリニューアルを実行させ、その代わり結果責任も取るべきなのです。これが本来の「ボトムアップ」なのですが、実際に出来るミドルは育てていないから存在しません。よって、TOPはすべて自分でできる案を立案し、その方法までミドルに指示すべきなのです。そのためにもTOPは研鑽する必要があるのです。これこそ「TOPダウン」であり、これも中々日本では存在しないのです。しかし、これを実現させないとTOP自ら考える企業へ変革もままならないのです。残念ですがこれが現状なのです。

また、新規MDというものが本当に自店のお客様にHITするものなのか?小売業とはローカライズ&カスタマイズしないと生き延びないので、まずは自店の来られる人(商圏)の囲い込みから始めるべきです。ECは別途=店を知らない人はサイトも知らないので入って来ない=逆に知って頂ければどこからでも入って来られます。つまり、もう一度商売(儲ける)の原点とも言える本田宗一郎氏の「現場、現物、現実」の三現主義の徹底に戻るべきなのです。これを如何に自社・自店に取り込めるかが重要なのです。

別の大手GMSも6月に新規OPENさせましたモールの核店舗として導入されたGMSの売場構成も、従来は衣料品が2Fで、住居関連が3Fだったものが、まだ院政を引いている親会社の前TOPではなく親会社の現TOPの声で、2Fと3Fを逆にして、3Fの衣料品が子供メインになり、婦人や紳士衣料の面積が圧縮され、小さく見えない場所に追いやられているのです。売上が取れていないので当然の結果です。親会社の現TOPの判断は素晴らしく、間違いではないのです。小売業はこの様に状況に合わせての変化対応が可能であり、走りながら修正できる業態なのです。

要はこれから何をすべきなのか?小さくなった衣料品売場の既存売上を検証し、その中でのデータ解析を駆使して利益や効率を上げ、再度復活を目指すべきなのです。フロアが上になり、面積も小さいから売上も小さくても当たり前」と考え、「負け犬根性」に陥る事だけは避けたいものです。過去のデータと現在のデータを比較しながら検証を続け、HINTを見つける事が当面重要なのです。大丈夫です。出来ます。出来ないと思う理由が見当たりません。ミドルが下を見続ければ、ボトム(スタッフ)も同様に下を向いた行動しかできません。お客様には見えています。

ファッション業界の変化への対応等は二の次で、まずは既存来店顧客の買上率と買上額(ECで言うCVRとCV)の向上以外に目を向ける必要は全くありません。自社・自店にお金を払って頂いている人がお客様なのです。自社・自店でお金を落として頂いていない人はお客様ではないのです。自社・自店で購入されてからお客様になるのです。将来買って頂ける可能性もあるとの言い訳も聞こえるのですが、現在までの自社・自店を支えてきたのはその購入されてきたお客様なのです。このデータ解析能力については、先週のこのブログに記載の通りです。

現在は自社・自店がこれからどうあるべきか、それに向かって現状からどう進むべきかを構築する必要に迫られてきています。経済環境は間違いなく変化の兆しが見えています。どう変わるのかは別として、その中での自社・自店は何をすべきかが問われているのです。

是非とも、健全なる企業経営に向けて、早急に改善・改革される事を祈念致します。
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