生地 雅之

2022 01 Aug

無人販売が出来ない小売業に将来はない

言いたい事はお客様の判りにくい売場構築で、「売れない・売れない」と嘆いていても光は見えないのです。「売れないのではなく、売らない(売っていない)」という事なのです。
先日ららぽーと某館のアルペンアウトドアーズの売場をリサーチしていた時も、マネキンに着せてある商品の他の色やサイズ違いがその横に陳列されていないのです。販売員を呼んで聞かないと何処にあるのかさえ不明なのです。ユニクロ燃りで話題の店やブランドでもすべて正解ではなく、部分的には不備も存在するのです。これを是正すればもっと売上も伸びると言うように解釈すべきなのです。決算が良く(取り敢えず結果オーライ)ても、すべて正解ではないのです。

多くのお客様は「販売員に声を掛けて欲しくない」心理状況にあり、お店自ら判り易いレイアウトにあればセルフで持って、レジに行って頂けるのです。勿論、商品の説明等には販売員が必要(機能タグは殆ど読まない場合の多いので=字だけではなく説明も殆ど耳に残っていないので、判り易い絵柄=イラスト等が重要)なれど、最後の最後で背中を押したりする(セールストーク)ことは必要不可欠なのですが、無くても売れる部分は沢山あるのです。この点を無視して、「売れない」や、「接客技術の未熟さ」等の議論は論外なのです。「売れない」ではなく「売らない(売っていない)」だけなのです。

GMSどころか百貨店の一部の外商(全体売上の平均20%程度、EC売上は2%程度)の会話をしているのではないのですが、百貨店の外商強化は必然ではあるものの、リアルの大半を占める通常の売上をどう確保するのかが重要なポイントなのです。百貨店におけるサイズ展開の多い靴(専門店やGMSと異なり、店頭にストックを積まないので)は多少販売員に色・サイズ探しを依頼する部分はあるのですが、これを理由に百貨店は接客が必要不可欠と言い切る事には疑問を感じるのです。そういう前に無人販売ではどこまで出来るのかの挑戦をして頂きたいものです。

食品売場は何故セルフが多いのでしょうか?見れば判るからなので、他の売場も何故その方向(見れば判るような売場)​​に向かえないのでしょうか?「出来ないと思う前にやろうとしていない」やその発想までも「気付きがない」からなのです。ビジネスは「気付き」がすべてと言っても過言ではないのです。特に百貨店では販売員は必要不可欠の部分も当然なのですが、最低やるべきことをやった上での話なのです。売場構築は精一杯やっているからこれ以上無理との会話から入る事も多いのですが、本当なのでしょうか?

現在の売場に手を入れると前年比が50%以上も伸びる(改善する)のは今まで精一杯やっていたと言える状態なのでしょうか?売場は生もので、即腐る(陳腐化)していくので、ディリーのウオッチが必要不可欠なのですが、そのウオッチする姿勢が機能しているのでしょうか?
「昔は良かった」という事を言っているのではないのですが、お客様に見易い売場の棚の高さは何CMまで、マネキンの高さは何CM迄等の基準を設けており、某百貨店では竿竹に目印のテープを張り、開店前の売場をマネージャーがチェック巡回されていらっしゃったものでした。

過去のこのやり方を容認している訳ではないのですが、「現在のお客様に適したやり方」に変化させ、現在の自社・自店のお客様に適した売場構築をして頂く事を願うものです。昔はマニュアルも存在したのですが、今や某大手百貨店でさえ、販売されている現場を知らない人の書いた現場と大きく遊離しているマニュアル本のコピーしかないのが現状であり、現在・未来に向けて自社・自店の売場に適合したマニュアルを自社・自店自らお客様目線で作り上げる事を望むものです。勿論、運営も。

小売業(特に百貨店)は百貨店層のマスを失って低迷していると考えている向きも多いのですが、実はマスを狙えなくなってきているのです。百貨店のマス層は存在しており、取り切れていないだけなのです。商品は今やオーダーにシフトしているように見えますが、儲かっているユニクロでさえ、フルオーダーではなくカスタムオーダー(パターンオーダーの域を出ていない)なのです。百貨店外商客の一部はフルオーダーのお客様も存在するのですが、まだまだ既製服のウエイトが高いのです。要は生産は小ロットやオーダーではコスト増につながり、マスで作ったものを如何にパーソナルに売るかに掛っているのです。小売業は売り方の変換が求められているのです。

各企業のTOP(経営者)は難しい戦略や戦術を駆使する事も重要なのですが、小売業の原点に戻り、「自社・自店のお客様」に向けての商品仕入(展開)・売場構築・サービスの見直し等に特化した「足元の振り返えり」から小売事業(自社事業)そのものの見直しを求めるものです。

現在は自社・自店がこれからどうあるべきか、それに向かって現状からどう進むべきかを構築する必要に迫られてきています。経済環境は間違いなく変化の兆しが見えています。どう変わるのかは別として、その中での自社・自店は何をすべきかが問われているのです。

是非とも、健全なる企業経営に向けて、早急に改善・改革される事を祈念致します。
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